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国際特許事務所

国際特許事務所について

2017年5月3日
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公開日:2017/05/03 | 最終更新日:2017/05/03

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日本の弁理士数は約11,000人(日本弁理士会ホームページより)であり、他の士業、例えば、弁護士の約38,000人(日本弁護士連合会ホームページより)、公認会計士の約30,000人(日本公認会計士協会ホームページより)、税理士の約76,000人(日本税理士会連合会ホームページより)等と比べると、人数がかなり少なくなっています。ところが、ネットで、士業が関係する事務所名を当てはめた“国際〇〇事務所”で検索すると、弁理士が関係する“国際特許事務所”のヒット件数が一番多いのです。それは何故でしょうか。国際特許事務所の仕事の特徴と共に見ていきましょう。

1.弁理士の業務の国際性(他の士業との違い)

(1)弁理士は、発明品に係る特許や、ブランド名に係る商標等に関する出願や訴訟を代理します。個人客もいますが、顧客は、企業が大部分を占めます。現在の国際社会では、外国に商品が流れていくことが非常に多いです。弁護士などは、外国での違法行為について相談されることもありますが、弁理士よりは頻度がかなり低いです。

(2)特許権や商標権は国ごとに発生します。最近、国際出願という言葉をよく聞くかもしれませんが、あらゆる国で有効な国際特許権とか国際商標権などが存在しているわけではなく、単に、出願「手続」を国際的にひとまとめにして行うことができるに過ぎません。そのため、ある国に特許権を取得しようと思えば、当該国の特許事務所に依頼して出願する必要あるのです。

代表的な外国出願パターンは、特許や意匠の場合、日本で出願した後に各国で出願するものです。商標の場合、同様のパターンと日本出願と無関係に各国で出願するパターンの両方があります。国際出願には、特許の場合にはPCT(特許協力条約)出願、商標の場合にはマドリッドプロトコル出願、意匠の場合にはハーグ協定出願があります。基本的には、日本で出願した後、同じ内容で複数の国に一括して出願できる制度です。
   
(3)また、外国では訴訟手続も頻繁に発生します。あるデータによると、アメリカでは日本の約10倍、ドイツなどでも日本の約5倍の数の訴訟が提起されている、とのことです。さらに、アップルコンピュータとサムスン電子の世界的な訴訟合戦等でお分かりのとおり、外国での訴訟は、知的財産権に関する訴訟が多いのです。となると、弁理士が、国内企業に依頼されて外国での訴訟手続に関わったり、(訴訟提起に抵抗がない)外国企業に依頼されて国内での訴訟手続に関わったりすることがよくあります。

上記のような事情は、他の士業にはまずないでしょう。

2.名称について

国際特許事務所が含まれる名称の事務所は、比較的歴史の浅い事務所が多いのではないでしょうか。いわゆる「老舗」と言われる事務所は、その設立当時、単なる「特許事務所」という名称が多く、また、国内出願が業務の中心であり、それに付随するものとして外国案件にも携わってきたという事情があります。そのため、徐々に外国出願の比率が増加したからと言って、敢えて「国際」を付ける必要もないし、昔からの名称を変更するのにも抵抗がある、といったところではないでしょうか。最近設立された事務所であれば、「国内・外国問わずあらゆる案件に対応できます」ということをアピールする意味で、「国際特許事務所」と名付けているところが多いようです。

3.人員構成の特徴

(1)国際特許事務所で特徴的なのは、外国人の所員がいるところが多い、ということでしょうか。外国案件に強い事務所であることを手っ取り早くアピールできます。外国の弁理士・弁護士を雇っている事務所もよく見かけます。但し、外国人が定着することは稀で、何年か後には、退職しているか他の外国人に代わっていることがよくあります。

(2)特許事務員も英語が得意な人が多くなります。国際特許事務所の場合、日本の出願人による外国出願や、外国の出願人による日本出願を代理することが多いですので、毎日のように外国代理人等とやり取りをします。そのため、法律的なことや実務的なことが詳しくはわからなくても、事務員も最低限先方がどのようなことを言っているのかくらいは分かった方が、仕事が進むからです。

(3)また、国際特許事務所と名付けた以上、所長自身も何等かの国際的素養を持っているでしょう。英会話は苦手でも、外国の代理人と積極的に交流しようとする人が多いようです。

4.国際的知財実務

(1)特許
特許の外国出願は大きく分けて2つのパターンに分かれます。1つは、日本で出願し、優先権の主張できる1年以内にPCT出願又は対象国に直接出願するパターンで、もう1つは、最初からPCT出願するパターンです。
前者の方が一般的ですが、後者の場合、特許されるかどうかのおよその判断が早期に示されますので、選択する出願人もいます。
PCT出願、直接出願いずれの場合も、その国の代理人に依頼して出願手続を行わなければなりません。そのため、特許明細書の翻訳にかかる時間を考えておくのが重要となります。一般的には、中国、韓国や台湾等に出願する場合は、日本語の特許明細書を送付し、外国代理人に日本語から現地語への翻訳をしてもらいます。その他の国に出願する場合は、特許事務所で翻訳した英訳文を送って、その英訳文又は英訳文から現地語に翻訳したもので手続してもらうことになります。

このように、外国出願の場合、翻訳費用が必要となり、また、特許案件の中間対応(拒絶理由通知の対応等)であれば事案が複雑で検討にも時間がかかることから、権利化までの費用が100万円以上になることもしばしばです。翻訳は、翻訳会社に外注することもありますが、国際特許事務所の場合は、所内に複数の特許翻訳者がいることが多いですし、日本語明細書作成者と緊密に話をしながら、技術内容を理解した上で翻訳作業を進めることができますので、事務所で翻訳作業を行うのが一般的です。

(2)商標
商標の外国出願のパターンは、国際出願(マドプロ出願)か直接出願になります。マドプロ出願の加盟国は約100カ国に達し、利用しやすくなったため、複数の国での権利化を考えている場合は、まず、マドプロ出願の適否を検討します。例えば、台湾・香港はマドプロには加盟していませんし、東南アジアのいくつかの国も、審査体制が加盟基準を満たしていない等の理由により加盟ができていませんので、これらの国については、従来通り直接出願することになります。
商標の場合、特許と異なり、中近東、南米、アフリカ等の特殊な国に出願することがありますので、これらの国において、信頼できる代理人を確保しておくことが、国際特許事務所として重要になってくるでしょう。

(3)意匠
日本における出願件数(2015年)は、特許が約320,000件、商標が約150,000件なのに対し、意匠は約30,000件しかありません。また、意匠権は、商品の「美的外観」を保護するもので、商品デザインの好み等は、国によって大きく異なりますので、外国出願の割合は、特許や商標に比べて低くなります。そのため、外国への意匠登録出願は、件数がかなり少ないのが現状です。
ただし、日本は、2015年に意匠の国際登録出願に関する協定(ハーグ協定のジュネーブ改正協定)に参加しましたので、今後は、外国への意匠登録出願が増える可能性もあります。

5.海外研修など

(1)国際特許事務所は外国案件について力を入れているため、所員の海外派遣なども頻繁に行っています。例えば、知財関連の国際機関による総会へ参加したりします。国際知的財産保護協会(AIPLA)や国際商標協会(INTA)などが代表的な国際機関で、毎年、国を変えて総会を開いています。取引のある各国代理人と直接会ったり、新たな代理人を見つけることも可能です。

(2)取引のある代理人の事務所に所員を派遣し、半年~数年の期間を設けて研修を受けさせる事務所もあります。派遣する所員は、やはり弁理士です。現地の実務を詳細に知ることによって、依頼人からも信頼される特許事務所になります。特に今は、日本の出願件数が少なくなりつつある一方、外国出願は増加傾向にありますので、派遣費用はかかりますが、事務所としては、得られた知識は後々貴重な財産になることでしょう。

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