企業内弁理士について
公開日:2016/12/03 | 最終更新日:2018/04/22
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弁理士の資格というのは、どのように活かしていくかが、業務形態や技術分野等によって大きく変わっていきます。
弁理士というと特許事務所をイメージする人も多いかもしれませんが、近年は企業が特許出願を自社で行うことも増えており、その影響から企業内弁理士が増えています。
資格を取得した弁理士が転職先を探す際に企業の求人を希望するケースも多くあるようです。
そんな企業内弁理士を特許事務所弁理士との違いに触れながら紹介をしていきます。
企業内弁理士と一言で言っても・・・
企業内弁理士は、どのような企業に所属をするのか、またどの部門に所属するのかによってその業務が大きく変わっていきます。企業の中において役職等に該当すれば、当然弁理士として先人を切り仕事をしていくこともあるでしょう。
弁理士という資格を用いて仕事をしているため、基本的な業務イメージは特許事務所と同じ特許出願業務と考える方もいますが、例えば特許調査や特許戦略の立案といった、特許事務所ではあまり担当することのない仕事も企業や部署によって行うケースもあります。また特許事務所では複数の企業を担当して特許明細書の作成を行うことがあるかもしれませんが、企業の場合はよりその会社の技術に対する理解を深め、専門的技術分野が異なっていても知識を吸収しなくてはならないこともあります。特許事務所では技術分野別で仕事を行いますが、企業は違います。技術分野が多岐にわたる企業もあります。
その他、将来的にはリスク管理や、予算の管理、新しい契約に関する雑務、そして管理職になるための研修等が始まっていきます。これらは当然弁理士として重要な仕事ですが、どちらかというと、上司としての業務になってくることが多いです。(業務分担や、戦略などを考える指示役、指導役に回ることが多くなるという意味です)特許事務所ではそのような仕事は無く、管理職になるための研修等もあまりありません。弁理士としての強みをプロフェッショナルとしてより磨いていくことでマネージャーやパートナーに昇格していきます。
組織のリーダーとなり引っ張っていく上で、当然弁理士以外の知識や経験が必要にもなってきます。
企業内弁理士で純粋に弁理士のみの仕事をしていきたいという場合、企業内で役職につくのは難しくなりがちです。企業にとって有能な人材と判断されなければ、昇進は難しく弁理士であろうとなんであろうと例外ではありません。
弁理士であっても、企業の中に所属する社員の一人であり、「企業に貢献する」ことが大前提ということです。
企業内弁理士は弁理士であるがゆえに「弁理士」のスキルはあって当然
企業内弁理士で求められるスキルとして非常に重要になるのが、プレゼンテーション能力と、交渉力です。
プレゼンテーション能力は、企業内弁理士において必須とも言えるでしょう。
プレゼンテーションをする際に、専門家がしてしまいがちなミスとして多いのが、「原稿をありのままに読んでいくだけ」ということです。これは読み手にとって非常に退屈な印象を与えてしまいがちであり、こちらの言いたいことがほとんど伝わらないことも多いです。
企業内弁理士は上述したように、戦略を多くの部下、社員に知ってもらったり、自分たちの役割を明確にしていくことが大切になる場面が多いです。また外部に対して情報発信をすることも多くなります。
この時プレゼンテーション能力が低いと、相手の理解を得ることが難しくなり、それはその先の仕事、もっと言ってしまえば、企業の行く末にも影響していきます。
自分を理解してもらうためには、相手を理解することが大切であり、共感の姿勢、プレゼンをする相手についての地道な調査が必要です。
会社の代表として公の場に出て行く可能性もある弁理士にとって交渉力も重要です。自分の会社にとってどれだけのメリットをもたらしていけるかというのは、条件を飲んでもらえる提携先や他企業に対して、どれだけメリットをもたらしていけるかにかかってきます。
自社の利益ばかり優先していては、会社はつぶれてしまいます。
真意を聞き出し、お互いのちょうど良い妥協点を見つけるスキルがあると、企業内弁理士としてとても重宝されます。
特許事務所でも最近は企業向けにプレゼンテーションをする機会も増えてきておりますし、より質の高い明細書を企業からは求められていますので、権利の範囲や明細書の内容について交渉する機会も増えています。中身は違えど根本的なコミュニケーション能力は必須といえます。
・弁理士であるので、弁理士業務はできて当たり前
企業内弁理士になって3年経過するまでは、基本的に弁理士のみの仕事をしていれば、存在価値は十分あるとされます。
逆に言うと、この3年間でしっかりと基本を身につけ、その企業内での弁理士の仕事のあり方を理解する、完璧に遂行できるようにならないといけないということでもあります。
ある意味で研修期間であり、企業にとって企業内弁理士は、弁理士プラスアルファが強く求められている存在であり、そうでなければ、仕事を長期的に続けていくことは困難になりがちです。
プラスアルファが求められている時代
企業内弁理士に限らず、弁理士には常にプラスアルファが求められるようになってきています。非常にわかりやすいのが、英語です。
英語は現在弁理士にとって必須に近い要素になってきており、国際的な活動を視野に入れる場合には英語だけではなく、他の外国語ができたほうが良いというくらいです。
弁理士としてしっかりと仕事をするためには、待つだけではだめであり、企業内弁理士も同様です。
企業内弁理士として企業、会社にどのように貢献していけるのかを考え、それに伴いスキルを身につけていかなければ、数多くいる弁理士の中に埋もれてしまうことになります。多くのスキルを持っている弁理士と、弁理士としてのスキルしかもっていない弁理士では、企業側として前者を選ぶのは必然です。
弁理士の資格を活かせる弁理士になるか、それとも・・・
企業の中には、弁理士としての資格は持っているが、企業内弁理士として仕事をしていない人もいます。
弁理士の指導の下、特許当の書類を作ることは資格を持っていない人でも行うことができます。
企業内弁護士を雇っている企業の中には、このような人が多く社員として仕事をしている職場もあり、中には弁理士の資格を持っているのに、あえて企業内弁理士として仕事をせず、弁理士の指導を受ける一般社員として仕事をしている人がいるということです。
なぜこのような人がいるのか・・・というと、それはそのほうが純粋に特許に関する仕事をしていくことができるからです。
前述した通り、企業内弁理士は、弁理士プラスアルファを、求められてきています。それゆえに、ベテランになればなるほど、指導役に回ったり経営戦略の責任者なども任されるようになります。
このようなことを嫌う人にとっては、企業内弁理士ではないほうが都合が良いということです。
純粋に弁理士の仕事に興味があるということだけで企業内弁理士になることはあまりお勧めしません。
その企業で自分の力を発揮していきたい、弁理士含め総合的に能力を高めていきたいと思う人に企業内弁理士は向いています。
終わりに
企業内弁理士は、最初に述べた通り、企業によって業務内容、必要性は変わっていきます。そのためまずはしっかりと企業について知っていくことが大切です。自分にとって関係ない部署についても、知っておくことで企業をより把握しやすくなります。
また幅広い視点というのは、企業内弁理士として経験を積んでいった際にとても大きな力になるでしょう。
弁理士として自分が何をしていきたいのか・・・ということももちろん大切ですが、それと同じくらい、企業が何を必要としているのか、何を求めているのかを考えていかなければいけません。
企業として弁理士に何を求めているのかについては、転職、就職をする際に最も重点的に集めていかなければいけない情報です。この点があやふやなまま就職、転職をしてしまうようなことがないように注意をしておくべきです。
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