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企業弁理士転職

弁理士が企業に転職する際に注意する点について

2020年9月3日
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公開日:2018/10/15 | 最終更新日:2020/09/03

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弁理士というのは、ある意味“自由業”であって、開業弁理士に限らず、勤務弁理士であっても通常は自由度が高いものです。その弁理士が特許事務所から企業に転職するのは、どのような場合でしょうか。そして、企業への転職に際し、注意すべき点は何でしょうか。まず、考えられる転職理由別に、説明したいと思います。

1.考えられる企業への転職理由

(1)企業から事務所に転職したものの、再び企業に再転職することになった
隣の芝生は青く見えるのかもしれませんが、例えば、企業で特許明細書作成を特許事務所に外注していた場合、企業弁理士としては特許明細書を作成してみたいと感じるようです。
そして、より弁理士としての実務に携わるために特許事務所に転職する人は非常に多くいます。そのほとんどは、継続して特許事務所に勤務したり、その後特許事務所を独立開業することが一般的ですが、稀に、特許事務所の実務が嫌になったり、解雇されたりする場合もあります。
こうなると、企業に戻るという選択肢を採ることが多くなります。しかし、一度は企業での仕事に嫌気が差して転職したのですから、どちらの仕事も嫌になる可能性があり、注意が必要です。

(2)明細書作成等、特許事務所の仕事が性に合わなかった
特許事務所に勤務している場合、多数のクライアントとやり取りを行う必要があります。通常、特許出願の受任は、特許事務所の受任担当者が行いますので、明細書作成担当者は、事務所が受けた仕事量が多ければ、それだけ大きな負担を被ることになります。
また、事務所にいると、大企業の知財担当者だけでなく、中小企業の担当者や個人発明家への対応を行います。また、多種多様な納期や特許庁の期限を常に考慮して作業を進めなければなりません。このような仕事が性に合わない人もいます。
例えば、言われた仕事をただ事務的に処理したい、というような人はこのパターンに当てはまります。ただし、企業に転職した場合、特に弁理士に対しては、仕事を丸投げして、面倒な事案を含めて知財に関する案件を全て任されるという話もよく聞きます。

(3)特許事務所で考えていた仕事ができなかった
事務所に勤務していても、入所時に考えていた仕事と異なる仕事をさせられることも少なくありません。代表的な例は、理系出身者が意匠や商標に関する仕事を割り当てられたり、文系出身者がバックグラウンドのない特許に関する仕事をさせられる場合です。
後者は納得して仕事を進めることが多いようですが、理系出身者の場合は特許明細書の作成に思い入れが強いことが多く、前者の場合は、転職を考えることが一般的でしょう。
そのような弁理士が企業に転職する場合、企業規模が大きくなく、ある程度自分の裁量で仕事ができるところを選択する傾向にあります。ただし、上で述べたように、入社後に知財関連の仕事を全て押し付けられることも少なくありませんので、注意が必要です。

(4)個人事業主である所長と合わなかった
特許事務所は弁理士数が10人未満の事務所が約97%を占めています(日本弁理士会「日本弁理士会会員の分布状況」(2020年7月31日現在)による)。つまり、ほとんどの特許事務所が中小企業や個人事業主が経営しているような組織で、1人の所長弁理士がコントロールしていることが多くなっています。
特許事務所の所長は、弁理士試験に合格して独立開業した理系出身者が多く、経営判断能力やマネージメント能力がなくても、弁理士という業務独占資格に守られて事務所経営を続けてきました。
つまり、知財実務に対するクライアントの評価が悪くなければ事務所経営には影響ありませんので、実は所員からの評価はあまり良くないという所長弁理士も少なくありません。事務所間の転職だけなく、事務所から企業への転職が頻繁に起こるのも、この点が大きな理由になっていると思われます。

(5)より大きい仕事(プロジェクト)を行いたい
特許事務所にいれば、特許明細書作成に関する仕事が多く、大きな仕事に携わることはほとんどありません。強いて言えば、知的財産権の侵害訴訟くらいでしょう。最近は知財コンサルティングを行う弁理士も増えてきましたが、コンサルティングを専門に行う外資系の大手コンサルティング会社のような仕事をするのは、マンパワー的にほぼ不可能ですので、現時点では大きな仕事にはなりえません。
そうなると、企業、特に大手企業に転職し、会社規模の大規模プロジェクトに知財面から携わっていくことが、現実的であると考えられます。

(6)企業の知財部員に誘われて
企業の知財部に属する人、通常は企業弁理士ですが、そのような人に誘われて企業への転職を決める弁理士もいます。特許事務所の仕事内容や待遇に不満を持っていたり、企業の知財務の業務内容に斬新さを感じたり、理由は様々です。
しかしながら、安易に企業への転職を決めると、具体的な仕事内容を掴めていないだけに、「イメージと全く違っていた」ということになりかねませんので、注意が必要です。

2.実際の企業弁理士の仕事と転職時の注意点

企業弁理士の仕事は、業種によっても異なりますし、企業によっても異なります。そのため、一概には言えませんが、代表的な例を挙げてみます。
 
(1)知的財産に係る出願業務
企業弁理士の仕事としては、現在もこの業務が最も多いと言えます。
社内の製品開発部や企画部などと、新たな発明に関する特許出願や新たに展開する商品に関する商標登録出願に関する打ち合わせを行います。それらの内容を特許事務所に伝えて、出願作業を進めていくわけですが、自社で出願手続も行っている場合は、特許明細書の作成や商標登録出願の願書の作成も企業弁理士が行わなければなりません。ただし、弁理士は管理職に就いている場合も少なくありませんので、その場合は、部下に指示しながら仕事を進めることになります。
特許事務所ほど気楽に仕事を進められないことも多いですので、転職する場合は、この点について理解しておく必要があります。

(2)勉強会(同業者、異業種)・セミナー参加
弁理士は、日本弁理士会に所属していますが、それ以外にも、知財に力を入れている会社は、日本知的財産協会などの団体に加入し、頻繁に意見交換、勉強会、セミナー開催などを行っています。
特許庁と意見交換する機会が多く、様々な情報を入手できるというメリットがある一方、セミナーの発表役や各委員会における世話係など、実際の社内での仕事以外にもやること多くなり、手が回らなくなる可能性がありますので、注意が必要です。

(3)社内上層部への知財に関する説明
この仕事が最も大変、という企業弁理士も少なくありません。知財に関する理解が足りず理解しようともしない上層部がいる会社の場合、説明資料の作成だけで数日かけることもあるようです。それでも理解してもらえない場合は、作成し直し、ということになります。
また、威圧的な態度を取られたり叱咤されることもあるようで、特許事務所ではあまり考えられないと思います。企業への転職を考える人は、「組織の一部」になるということをよく認識しておいた方が、転職後に精神的な負担が少なくなるでしょう。

(4)契約業務や係争案件処理
これらは、企業活動において、どうしても付いて回るものです。専門的な知識だけでなく、相手方との頻繁な交渉・駆け引きが必要となりますので、一般的な弁理士には苦手な仕事と言えます。
この作業ができれば、他の弁理士と差別化され貴重な存在となり得ますが、転職に際しては、留意すべき点でしょう。

3.まとめ

 最近の弁理士試験合格者は、半数以上が会社員となっており、企業弁理士が多くなっていることがうかがえます。その結果、社内での分業化が進んだり、逆に多くの業務を弁理士がこなしていたりする実情があります。転職の際には、そのような可能性を考慮し、事前にできるだけ調べておくことが重要でしょう。

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