SACTサムライマガジン
機械系特許事務所

技術分野別、特許事務所の業務内容について(機械系編)

2017年7月14日
machine

公開日:2017/07/14 | 最終更新日:2017/07/14

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機械系の発明は、世間一般に言われている機械だけでなく、日用品、包装容器や家具など、構造で特定できるあらゆるものが対象となります。例えば、日用品、包装容器や家具なども含まれます。クレームや明細書の書き方についての本が何冊も出版されていて、化学・バイオ系に特化したものや電気系に特化したものはよく見かけますが、機械系についてのものはあまりありません。それは、機械系の明細書の書き方が一般的だからです。

特許事務所で行われる機械系の業務内容について、クレーム・明細書の記載内容で確認しておきましょう。

1.発明の対象

(1)物の発明
上で述べたように、あらゆる物品が該当します。家庭用・工業用の機械、自動車、日用品、および、よく個人発明家が発明する便利グッズなどが代表的です。

なお、特許とは別に実用新案というものがあり、発明ほど高度のものではない「考案」を保護するものですが、実用新案は物品の形状や構造(及びその組合せ)しか保護対象となりません。そのため、化学物質の発明は対象外となり、電気系も件数が多いソフトウェア発明などは形状や構造がないので、実用新案では保護されません。実用新案は、基本的に機械系に関するものであり、この点からも、機械系の発明が特許案件の中心であることがわかるでしょう。

(2)製造方法の発明
機械の製造方法や、各種機械部品の製造方法などが挙げられます。構造物を作り上げる上で、その製造方法を使わなければならない場合や使うことが有効である場合の発明です。

(3)方法の発明
装置の作動方法や制御方法などが挙げられます。機械は、構造等から使用方法がほぼ決まってしまいますので、化学・バイオ系等と比べて、方法の発明は多くはありません。
また、機械の使用方法が、特許権の効力の及ばない家庭的・個人的に行われる場合が多いことも影響しているでしょう。

2.出願人について
 
機械系は、対象が広いため、個人から大企業まであらゆる出願人が存在しています。当然出願件数も多いですが、個人が弁理士に依存せず自ら明細書を作成していることもよくあり、明細書の質は玉石混交です。
 

3.クレーム・明細書等の特徴

(1)クレームの記載の特徴

機械系の発明に関するクレームは、構成要件として必要なものを、その構造がわかるように記載していきます。クレームの記載形式としては、構成要件列挙型クレーム、ジェプソン型クレーム、書き流し型クレームがあります。
構成要件列挙型クレームは、「Aと、前記Aと~するBと、前記Bと~するCとを備える……装置」というような書き方で、現在の日本における特許出願ではこの書き方が最も多いでしょう。どのような要素があって、それらがどのように関わり合って構造を作り上げているかが分かりやすい書き方です。

ジェプソン型クレームは、「Aと、前記Aと~するBとを備える……装置において、前記AをCとしたことを特徴とする……装置」というような書き方で、従来の日本出願で主流であったものです。「~おいて」の部分は前提部といって、公知になっている内容を記載しており、その後の記載は特徴部といって、発明の特徴部分を記載することになっています。何が発明の特徴部分であるかが一目でわかります。

書き流し型クレームは、「AにBを設け、前記BにCを設け、前記Cを~する……装置」というような書き方になります。クレームが長くなると、構造をイメージしにくくなり、また構成要件列挙型クレームが現在の主流となっていることから、あまり使われなくなりました。   
機械系のクレームに記載される発明を分類すると、概ね以下のようになります。

① 大型機械関係、自動車などの発明
大型機械や自動車などの発明については、いろいろな技術が含まれています。最近、話題になっている人工知能やIoT(Internet of Things)などの技術が取り入れられることも多いですので、クレームもそれを反映させた内容になります。

例えば、大手自動車メーカーの発明では、自動車部品の素材から、その素材を用いた自動車部品及びその自動車部品を用いたエンジン等に至るまで、一貫して出願することがあります。機械が大型になると、あらゆる素材・部品が含まれていますので、それら全てが発明の対象となります。
必然的に、クレームの記載も構成要件列挙型の機械系のクレームだけでなく、化学・バイオ系のクレームも含まれるようになります。IoT技術も取り入れられる場合、電気系のソフトウェア・システム発明のクレームも記載する必要があるでしょう。

② 小型機械などの発明
これらの発明は、企業が発明することが多いですが、ネットワークに繋がれることを考慮したり、素材まで一から発明することは稀であるため、従来の機械系のクレーム記載になることがほとんどです。

③ 日用品、便利グッズなどの発明
特許庁などが推奨する個人、中小企業の発明はこれに該当することが多いでしょう。物品を構成する要素の数は少ないことが一般的ですので、クレームの記載量はそれほど多くならないでしょう。

(2)明細書の記載

クレームに記載した構成要件それぞれについて、全て明細書で説明していきます。そうしないと、記載要件違反の拒絶理由が出される可能性があるからです。ただし、化学・バイオ系と比べると、構造等で特定することが多い機械系はクレームの内容を明細書で記載するのは困難ではありませんので、そのような拒絶理由が出されることはあまりないでしょう。

化学・バイオ系とは異なり、機械系は、実施例に記載は必須ではありませんが、逆に図面は必須となります。
そして、機械系以外の分野にも言えることですが、将来、審査において拒絶理由に対応するためにも、明細書中にクレームを補正するための材料をなるべく多く含めておくのが重要です。

4.外国関係

特許の国際出願は、特許協力条約に基づく国際出願(通称「PCT出願」)といいます。PCTの加盟国数は、151カ国と非常に多いため、現在は、外内出願(外国から日本への出願)の場合も内外出願(日本から外国への出願)もPCT出願を利用したものがほとんどです。
PCT出願を利用した内外出願の場合の一般的な流れは、①日本出願後1年以内に優先権を主張してPCT出願を行い、②日本の出願日(優先権を主張する場合は「優先日」といいます)から原則として30ヶ月以内に、151加盟国の中から権利化を希望する国を選択して「国内移行」という手続を行うというものです。国内移行手続を行って初めて、その国で審査が開始されます。

なお、「優先権」とは、それを主張して最初の出願から1年以内に出願した場合、後の出願の審査において、優先日に後の出願も行ったと取り扱われる権利を言います。上の例でいいますと、日本の出願日が2017年 4月 1日のとき、その日から1年以内の2018年 4月 1日までにPCT出願を行った場合、国内移行した国においても、2017年 4月 1日に出願していたものと取り扱ってもらえるのです。
日本からのPCT出願における国内移行国としては、アメリカ、ヨーロッパ、中国、韓国、インド及び東南アジア諸国が多くなっています。中国や東南アジアは製造のために、アメリカ、中国、ヨーロッパは販売のために、特許権を取得することが一般的です。

5.今後(まとめ)

機械系は、素材において化学系と重なるところがあり、機械の利用において電気系と重なるところがあります。構造だけの機械系特許を取ることは、徐々に少なくなっていくかもしれません。AIやIoTを絡めた機械が増えていくと思われますので、そのような傾向に備えていくことが重要でしょう。
また、外国出願においても、販売がメインであったアメリカはトランプ政権になりましたので、今後は製造のためにアメリカで特許権を取得する企業が増えるかもしれません。

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