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特許転職

特許業界の転職において求められる人材とは?

2021年7月1日
big-building

公開日:2018/09/07 | 最終更新日:2021/07/01

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通常、転職は、異業種への転職も少なくありませんが、特許業界の転職は、同業種間の方が多くなっています。そして、一度特許業界で働くと他の業界に行くことはほとんどありません。それだけ、やりがいのある業界であると言うことができるでしょう。今回は、特許業界の特徴を説明しながら、そこで求められる人材について見ていきたいと思います。

1.特許業界の特徴

 特許業界は、主に、企業の知的財産部や法務部等、及び、特許事務所に分かれます。

(1)企業の場合
特許関係の仕事に従事するか否かは、配属によって決まり、通常は、新卒者の方が多いといえます。
しかしながら、最近は、知財に関する戦略が企業の業績に大きく影響してくることから、大企業を中心に、他社の勤務弁理士、特許事務所の勤務弁理士など、幅広く知財の実務経験のある転職者が入ってくる傾向にあります。企業が知財に関する優秀な人材を確保しようとする意図がうかがえます。
なお、他人の出願を代理する特許事務所と違って代理人である必要はありませんので、特許関連業務の従事者は弁理士でなくても問題はありません。特許事務所における特許技術者も対象となります。

(2)特許事務所の場合
特許業界の代表的な存在である特許事務所は、既卒者として入る人が多いところです。新卒者で特許事務所に入る人もいますが、明らかに少数派です。昔から、既卒者が多い業界であり、現在もその考え方が変わっていないためでしょう。ただ全体的な人手不足の影響もあり、昨今では新卒採用を新たに開始する特許事務所も増えてきております。しかしながら、まだ数が少なく、新卒者が特許事務所に入るケースが増えるのには時間が掛かるでしょう。弁理士試験の受験者のほとんどが社会人であるのも影響していると思われます。

2.求められる人材

現在の特許業界の転職で求められる人材とはどのようなものでしょうか。組織(企業か特許事務所か)と技術分野の2つの面から説明したいと思います。

(1)組織の面

① 企業の場合
特許を含む知財に力を入れようとする企業は、特許事務所に比べて規模が大きいのが一般的です(昨今ではIPOを目指すベンチャー企業も知財に力を入れている所は増加傾向にはあります)。したがって、会社という「組織の一員」として仕事をしなければなりません。自分で代理人となることができ、通常は裁量の余地も大きい弁理士は、「組織の一員」になれるか否かが問題点になり得ます。

企業の知財部員は、会社のクライアントと直接話をすることはあまりないと考えられ、どちらかというと、社内調整役という役割を担っていることが多いと思われます。
一般的に企業の経営陣や上層部は知財に関してはあまり知識を持っていないようです。そのため、知財部員が説明を行ってもなかなか理解してもらえず、責任の一部を知財部が負うような状況になり、負担が大きいという話も聞きます。

したがって、企業の業種にもよりますが、企業への転職者は、知財に関する知識を持っているのは当然のこと、取引する特許事務所とのやり取り、他社との契約・交渉・係争処理だけでなく、社内処理も適切に行える人材が求められるでしょう。
最近は、企業同士の講習会等が頻繁に行われるため、絶えず勉強を続けられるかどうかが重要になってくると思われます。

② 特許事務所の場合
特許事務所の場合、少人数の所員の一員として仕事をし、いろいろな業務を行います。一時期は弁理士の求人ばかりでしたが、最近の弁理士試験合格者数の減少を受け、特許技術者も積極的に採用するようになっています。

弁理士の場合、特許明細書の作成及び中間処理(拒絶理由通知の対応など)がメインの業務になりますので、この作業ができることが求められる条件となります。審判手続や訴訟手続の経験があれば、転職において有利になるかもしれません。また、小規模事務所の場合は、商標案件や意匠案件を含め、幅広く対応しなければならないことも少なくありません。また、国際案件が急増している背景から、最低限の英語力、及び、主要国の特許制度についても身につけておく必要があるでしょう。

特許技術者の場合、資格を持たないため、弁理士より転職の条件は厳しくなります。機械・化学・電気いずれかのバックグラウンドを持っていることが必要条件になるでしょう。特許明細書作成の経験が無い場合は、特許事務所が教育する必要がありますので、さらに条件が厳しくなります。企業での開発経験や知財部での経験など、特許明細書作成に役立つ他の経験があれば、評価はしてもらいやすいでしょう。

特許翻訳者の場合、基本的には特許翻訳の経験があることが条件となりますが、そのような人は弁理士より貴重な存在で、どの特許事務所も離職しないよう気をつけているため、転職する事例はあまりありません。そのため、特許翻訳の講座を修了した人などが応募してくることが多く、そのような場合は、面接時に課題を与えて実力を確認し、採用するか否か判断することも多いようです。

特許事務員の場合は、知識の量より人柄等を見られます。応募者も採用される人も女性が多くなっています。仕事内容としては、来客・電話対応や書類のチェック等が多く、特許事務員が処理した仕事は、弁理士などが再チェックすることになります。指示通り正確に仕事を行うことが求められますが、勤勉であって知財の基本的な知識を身に付けることができれば、全く問題はないでしょう。

(2)技術分野の面

① 化学分野の場合
  化学分野で求められる人材としては、化学のバックグラウンドがあることが必須の要件となるでしょう。文系出身者に限らず、機械系学部出身者や電気系学部出身者も対象外となるでしょう。また、化学分野の中でも、様々な専門分野が存在します。例えば、バイオ・遺伝子系特許や製薬系特許は、薬学部等、それを専門とする学部出身者でないと難しいと思われます。   
化学分野は専門性の非常に高い分野と言えます。

② 電気分野の場合
  電気のバックグラウンドがあることが好ましいでしょう。ただし、ソフトウェア発明などは、バックグラウンドが異なっていても、コンピュータ関係の知識が豊富であれば対応できないことはありません。
  複雑な電気機器などの発明については、電気系学部出身者でなければ対応は難しいでしょう。
  なお、最近増えているIoT関連発明やAI関連発明は、基本的に電気分野の発明と言えます。そのため、電気分野の特許部門からは、これらに対応できる能力が求められます。

③ 機械分野の場合
  機械分野にはいろいろな発明が含まれます。精密機械などの複雑な構造をもつ発明もありますが、例えば、日用品など個人発明家が得意とする発明もあり、このような発明であれば、文系出身者でも対応可能な場合があります。
  ただし、バックグラウンドをどのあたりまで要求するかは特許事務所によって異なりますので、一概には言えません。
  なお、上の②でも述べましたが、IoT関連発明においては、機械などをソフトウェアやインターネットを介してつなぐ、というのが一般的な考え方ですので、機械分野でも、今後はこのあたりの知識が要求されてくるものと思われます。

3.まとめ

 特許業界は専門性が高いため、そこで求められる人材はある程度特化されており、応募者もその要件を満たしている人が多いのが特徴的です。まず、特許を含む知財に興味を持つことが重要でしょう。面接でも、なぜ特許業界に入ろうと思ったのか、そのためにどのような努力をしてきたのか、を問われると思いますので、その質問にきちんと答えることができれば、人材を必要としている現在の特許業界に転職できる可能性は高くなります。

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