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弁理士特許事務所

特許事務所の将来性について

2019年9月17日
mag

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小泉元首相が行った2002年の知財立国宣言以来、弁理士数は増加の一途をたどり、平成25年には10,000人を突破しました。弁理士試験の合格率も10%を超えた年もあり、その弁理士数の急激な増加から、特許事務所の将来を危ぶむ声も多く聞かれました。

ところが、知財立国宣言で目標とされた弁理士数10,000人を達成した直後の平成26年度の弁理士試験では、合格率が6%台に落ち、合格者数も前年度の約半分に激減しました。この極端な対応には批判も多くありましたが、何年もの間、弁理士関連団体等が要求し続けていた内容であり、今では反対の意見はほとんど聞かれません。

ここ数年の合格者数は250人前後で落ち着いており、合格者の半数以上が企業勤務者となっていて弁理士登録を行わない人も多いことから、弁理士数はあまり増えていません。

特許事務所の現状と上記のような知財を取り巻く近年の環境から見て、今後、特許事務所の将来の見通しはどのようなものか分析してみました。

1.知財に関するこれまでの業務について

これまでの特許事務所は、特許庁への出願手続がメインの業務でした。しかしながら、リーマンショックが起こり、その直後から出願件数がかなり減少しました。多くの事務所は、基本的には採用を抑えることで対処してきました。さらに、この時期は弁理士試験の合格者数が多い時代でしたので、特許事務所だけでなく、特許事務所勤務を希望する合格者にとっても求人がほとんどなく、特許業界全体にとって大変な状況が続きました。特に、実務未経験の合格者については、非常に厳しい状況で、日本弁理士会が、各特許事務所に対し、このような未経験者をインターンとして受け入れるよう積極的に求めていました。いわゆる、「弁理士の就職氷河期」のような状況です。

特許出願件数自体は、リーマンショック直後より増加したとは言えませんが、横ばい状態です。一方で、特許事務所としては、採用を抑えてきた分、そろそろ世代交代に係る新たな弁理士を雇い入れる必要がありますが、昨今の弁理士試験合格者の減少により、逆に、特許事務所側が条件に合致した弁理士を探すのが難しくなっています。
また、大企業の中には、弁理士合格者を多数抱えている企業もあります。そのような企業の中には、勤務している弁理士あるいは未登録の弁理士試験合格者が中心となって、自社出願化を進めているところも少なくありません。そのため、特許事務所の受任件数にも影響が出ています。

2.特許事務所の今後の事業展開について

それでは、特許事務所としては、今後どのように対応していけばよいでしょうか。出願内容の質の向上を当然必要ですが、その他に以下のような方法が考えられます。

(1)外国出願と国際出願
弁理士業務は、他の士業と比べて国際的な要素が多いですが、外国案件業務を苦手にしている特許事務所は、案外多いものです。英語力が不足していることも挙げられると思いますが、外国の特許庁の審査においても現地代理人との通信においても、予想外の対応を強いられることがあり、コミュニケーション能力を求められるということがその一因でしょう。国民性の違いもありますが、手続の内容や必要書類及び審査の基準が日本と異なっていることがよくあり、審査能力及び現地代理人の能力が日本に比べて高くない国も多いため、経験が無いと対応に苦慮し、結果的に、依頼人の信頼を損ねることもあります。

逆に、外国案件に精通し、出願前から的確なアドバイス等を行える特許事務所は、他所との差別化が可能となり、今後も外国案件の仕事を任されることが多くなるでしょう。
 さらに、これらの外国向け出願は費用が高額になるため、公的機関が外国出願補助金の申請を受け付ける「中小企業等外国出願支援事業」を利用する場合も増えています(https://www.jpo.go.jp/support/chusho/shien_gaikokusyutugan.html)。このような補助金の申請は、原則として、公的機関と出願人とその代理人である特許事務所の三者間契約により手続が進められるため、出願人が申請手続を希望する場合、手続経験があれば出願人に適切なアドバイスを行うことができ、より有効です。

(2)訴訟案件
別の業務として、知財に関する訴訟案件があります。特に、特定侵害訴訟代理業務試験に合格したことを付記を受けた弁理士(通称、「付記弁理士」)は、侵害訴訟の基本的知識を持っているとみなされ、特許庁による審決に対応する審決取消訴訟に対しても有効に対応できると考えられています。
2019年3月現在、3,300人以上の付記弁理士が存在しています。割合としては、全弁理士数の3分の1以下ですので、付記弁理士が在籍している特許事務所は多くなく、訴訟案件を取り扱いやすいと言えます。ただし、日本における訴訟件数自体はかなり少ないため、訴訟手続を主要な業務にするのはかなり難しいでしょう。

一方、IoTやAI、外国出願の増加、及び、国際標準化の競争が激化していることから、最近は国際仲裁手続が注目され始めています。各国で法制及び裁判所の判断が異なる中、いろいろな国で同時に訴訟を提起していれば、根本的な解決にはならない可能性が高いためです。特許庁においても、ホームページ上で知財仲裁ポータルサイト(https://www.jpo.go.jp/support/general/chizai_chusai_portal.html)が開設され、2018年6月には、特許庁が主催して、外国の裁判官等を迎えた模擬国際仲裁が開催されました。非常にハードルは高いと言えますが、今後、国内の仲裁や調停、あるいは、国際仲裁に携わることができる特許事務所は国内外からの多くの依頼を受けられる可能性があるでしょう。

(3)知財コンサルティング
最近、日本弁理士会が力を入れているのが「弁理士知財キャラバン」という知的財産コンサルティング(通称、「知財コンサル」)です。一般的なコンサルティングに知財の要素を取り入れ、知財の専門家である弁理士が企業の事業展開等について知財の面から適切なコンサルティングを行う、という内容です。

ただし、現時点ではなかなか世の中に浸透していないと言えるでしょう。知財コンサルを行っている特許事務所の多くが、未だ「出願依頼に繋げるためのコンサルティング」という意識を持っていて、コンサルティング業務についてはそれほど費用を請求していないことも要因の一つです。そのため、出願とは無関係に、知財コンサルのみを業務にしていくやり方が浸透すれば、将来的には有効な新しい業務になっていくかもしれません。

3.まとめ

上述の通り、他の業界と同様、弁理士の競争も激しくなり求められることも高度化しますが、知財分野は専門性が高いため、異業種からの参入は難しいと考えられます。その意味では、特許事務所の将来性は高いと言えます。
そして、専門分野を磨くことにより、他所にはない強みを持つことが可能となります。

さらに、クライアントに対して親身な対応を続けていけば、長期的にみて、特許事務所の将来性に良い影響を与えるでしょう。最近は、利便性を求めてクライアントとのやり取りにSkype等を利用する機会も増えていますが、やはり、クライアントと良好な関係を続けていく意味でも、無用のトラブルを避ける意味でも、できるだけクライアントと直接会って面談することが大切です。

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