弁理士という仕事
公開日:2016/12/14 | 最終更新日:2016/12/14
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あなたは、弁理士という仕事をどこまで知っていますか?普段仕事などで係わりがなければ、「弁護士との違いがわからない」「特許に関係していることしか知らない」という方も多いかもしれませんね。
弁理士は、いわば知的財産のプロフェッショナル。国の垣根を超えて「モノ」が作られる現代において、その重要性をますます増しているのです。
仕事の内容から今後のニーズまで、弁理士という仕事について学んできましょう。
弁理士とは
□仕事の内容
弁理士の仕事は幅広く、法律によって「本来業務」(弁理士法第4条第1項)とその他の業務に分けられています。
本来業務の一つ目は、特許権・実用新案権を取得することです。新しい発明をしたときにこれを権利化しておかなければ、他の人に真似をされてしまう可能性があります。そこで、発明内容や先行技術の調査をふまえ、権利の範囲をあらかじめ確定するのです。その上で、特許権または実用新案権のうち、適切な方に出願をします。
次に、意匠権を取得することが挙げられます。ここで、意匠を分り易く言い換えると「デザイン」のことだといえます。このデザインについて国から登録を受けることが、意匠権の取得業務なのです。
本来業務の三つ目としては、商標権を取得することが挙げられます。例えば、「宅急便」はヤマト運輸のサービス名であり、他の会社が使用することはできませんね。このように、商標権とは、商品やサービスにつけられた名前を独占的に使用する権利のことをいいます。
最後に少し毛色の違う業務として、異議申し立て手続きが挙げられます。これは要件を充たさない他人の特許を消滅させる手続きになります。「他人の特許を消すことができるなんておかしい」と思われるかもしれませんが、審査官による審査が常に完璧であるとは限りません。そこで、再審査を兼ねて特許を見直すために異議申し立てを認めているのです。
以上のとおり、本来業務を行うにあたっては、法律的知識はもちろんのこと、技術についても深い見識を要します。そのため、このような業務は弁理士が主として従事するよう、法律により定められているのです。
なお、本来業務以外では、訴訟や和解といった紛争業務や、契約の締結を行う取引関連業務なども行っています。
□弁理士のなり方
弁理士になるためには、まず弁理士試験に合格しなければなりません。その上で、登録前義務研修を修了し、日本弁理士会に弁理士登録をする必要があります。
弁理士試験は短答式試験・論文式試験・口述試験の三段階から構成されています。
短答式試験はいくつかの脚から正解を選ぶというもので、特許・実用新案に関する法令(20題)、意匠に関する法令(10題)、商標に関する法令(10題)、工業所有権に関する条約(10題)、著作権法及び不正競争防止法(10題)から出題されます。これをクリアすると、次に論文式試験に移ります。必須科目として工業所有権に関する法令について記述し、加えて6科目(理工Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ、法律)から1科目を選択して回答します。最後に、口述試験。ここでは、四法(特許法、実用新案法、意匠法、商標法)について論理的なコミュニケーションを図れるかが問われます。口述試験は、平成21年度まではほとんどの人が通過できる試験でしたが、現在は難化しており、対策が必要な試験になりました。
このような試験で最終合格を果たすと、約4か月の実務修習が待っています。これが終わると弁理士登録を行い、ようやく一人前の弁理士として活動することができるようになるのです。
弁理士試験の良い点は、受験資格において学歴、年齢、国籍等による制限がないところでしょう。これにより、様々なバックグラウンドをもった多様な人材を集めることが可能になっています。
弁理士の就職先
・特許事務所
弁理士の就職先として最も多いのは、特許事務所です。ここでは、特許出願手続きを中心に特許制度全般の問題を扱います。
まず100人以上の弁理士を抱える大規模事務所ですが、認知度に反し、これは全体の0.2%に過ぎません。大規模事務所の特徴としては、特許出願件数が多く、知的財産に関わる幅広い分野を扱っていることが挙げられます。また活躍の場は国内にとどまらず、国際問題や最先端の事案にも携わっています。ただし、仕事は常に忙しい傾向にあるため注意が必要です。
弁理士数が50~100人の中規模事務所は、全体の3%です。中規模事務所では、事務所のカラーによって業務内容が変わってきますが、事務所ごとに高い専門性を持っていることが強みです。最後に、弁理士事務所のほとんどを占めるのが、弁理士数10名以下の個人事務所です。人数が少ないため、一人で様々な案件をこなさなければならず、個人としての仕事の幅は広がるでしょう。
なお、特許事務所での給与体系は、基本給+資格手当、または年俸制となっており、無資格者より報酬が高いことが多いです。
・企業内弁理士
企業弁理士として企業の中で働く方法もあります。これは企業の知財部に務め、そこで会社の商品の権利化業務や、他社の特許権侵害を排除する業務に携わるという働き方です。会社の一社員としてサラリーマンになりますので、福利厚生が手厚いというメリットがあります。
企業内弁理士の年収について、基本給は他の社員と変わりありませんが、出世が早かったり、手当がつくため、無資格者より年収が高い傾向にあります。
・独立
最後に、これらの就業場所を経験してから、独立開業する弁理士もいます。独立してしまえば職務内容は自由ですし、年収も自分の力量にかかってきます。中には合格後すぐに独立する人もいますが、先ずは事務所か企業に勤め、ノウハウを蓄積してから独立する方が良いでしょう。
では、弁理士と弁護士はどこがちがうのでしょうか?
実は弁理士の業務内容は弁護士も取り扱うことができ、加えて、弁護士は特許等の侵害訴訟において代理人になることも可能です。そうなると、「弁理士よりも弁護士の方が知財問題に対処しやすいのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、弁理士の最大の強みは「技術に熟知している」ことにあるのです。特に弁理士の中には理系のバックグラウンドを持っている人が多く、技術的な側面から発明内容を読み解くことが可能です。このような能力は、出願する権利の範囲をどこまで設定するか、という点において非常に重要になってきます。
これまでのニーズ・これからのニーズ
□これまでの弁理士の仕事
1990年代ごろは、弁理士の仕事はいわば「入れ食い」状態でした。弁理士の数は少ない一方で、知財関連の仕事がたくさんあったからです。そして、この時代から現代にかけて、弁理士の主な仕事は特許の出願でした。この傾向は今も続いており、例えば財産的価値の高い特許明細書(特許出願の際に提出する、発明を説明した明細書)を作ってほしい、というのがクライアントの強い要望であったりします。
しかし、弁理士の数が1万人を超えた現在において、特許関連の仕事については供給過多となっています。そのため、新しいニーズの開拓が必要となってくるのです。
□弁理士のこれから
これからの弁理士は、国際業務にも対応できることが必須であるといえます。財産権については国ごとにわかれており、日本国内で権利を取得しても、外国ではこれが及ばないからです。そこで、これからの弁理士は、外国で知的財産権を取得できるだけの力を身に着けておく必要があるといえます。
また、国内におけるニーズの把握も重要です。例えば、中小企業ではまだまだ権利意識が低く、すばらしい発明にも拘わらず保護されていないという実情があります。また、大学内での研究発明に関し、権利保護が十分でないという問題も残っています。このように、いままで表面化してこなかった知的財産の問題を拾い上げていくことが、弁理士の業務拡大にとって重要であるといえるでしょう。
まとめ―弁理士のフィールドは広がっていく
知的財産のプロである弁理士の仕事は、発明がなくならないのと同じように、常に尽きることがありません。しかし、仕事をしていくうえでは、細やかなニーズの察知や、クライアントとの意思疎通が何よりも重要になってきます。法的・技術的知識はもちろんのこと、相手の意思をくみ取る力も重要な職
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