SACTサムライマガジン
50代弁理士転職

50代弁理士の転職市場動向

2020年4月17日
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公開日:2018/08/03 | 最終更新日:2020/04/17

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平成29年度弁理士試験の統計を見ると、50代の志願者が700人以上存在していて、志願者全体の約1/6を占めています。ちなみに、このときの志願者の最高齢は88 歳でした。

最近は、あらゆる業界で人手不足が報じられていて、知財業界も、弁理士合格者数が減っていますので、数年前より求人数も大幅に増えています。人手不足の解消策として、求人の内容を見ていると、実務経験を重視する代わりに年齢を気にしないもの、実務経験が無くても良いので、ポテンシャルを重視するものなど、募集要件が多少緩和されています。その影響か、転職平均年齢も上がってきているようです。

50代になると、各弁理士の経歴は様々で、50代になってようやく弁理士の合格した人でも実務経験者もいれば全く未経験の人もいます。
このような状況において、50代の弁理士が転職する場合にどのような留意点があるのかを見ていきましょう。

1.特許事務所への転職後の地位について

(1)一般所員
知財業界で中心になるのは、もちろん弁理士です。弁理士の質及び量は、事務所の力を示すものですので、各事務所共に弁理士を確保するのが重要課題になっています。数年前までは求人が非常に少なく、かつ、年齢制限が厳しかったことから、弁理士であっても転職が大変な時期がありました。
現在は、あらゆる方面で求人が出されており、特に特許事務所では、弁理士を確保する観点から年齢制限を設けないところが増えています。そのため、50代の弁理士であっても、実務経験者であれば、転職先がすぐに見つかる可能性が高いでしょう。未経験者でも、真剣にアピールすれば転職先はあるのではないでしょうか。

(2)パートナー
それまでに個人事務所を経営していたり、他の事務所の幹部であった弁理士は、特許業務法人に共同経営者である「パートナー」として迎えられることがあります。
特許事務所は人の入れ替わりが比較的多い業界です。共同経営者でも事務所を去ることもあるため、実務経験が豊富で事務所経営の経験もある弁理士は、「パートナー」として転職するケースもあります。
また、そのような50代弁理士の場合、特許権の存続期間が出願日から20年であることを考慮して、クライアントから「このままこの弁理士に仕事を依頼し続けて特許権の管理は大丈夫なのか」と思われる年齢であることから、今後依頼を受け続ける意味でも若い弁理士も所属している他の事務所に移った方が良い、という考え方もあるようです。

(3)顧問・技術顧問
企業や特許事務所での経験が長い場合は、アドバイザー的な存在として、技術顧問として転職することもあります。特許事務所としても、経験豊富な弁理士も在籍していることを対外的にアピールできるというメリットが生まれます。
技術的な面ではなく、訴訟経験が豊富であるとか、長く知財ライセンス契約に従事していたとか、外国案件を専門に行ってきて翻訳の仕方や他国の審査実務に精通している、というのも他の弁理士いと比較して大きな強みになります。
 
(4)事務所所長
50代のベテラン弁理士の場合、所長として特許事務所に転職する場合もあります。とりわけ、これまで特許庁の審査官や審判官に従事してきて、弁理士資格の取得理由も「弁理士試験合格」ではなく「特許庁事務従事」である弁理士がこのパターンに多いようです。対特許庁を見据え、特許庁OBの弁理士の知識・パイプを利用しようという、特許事務所の意図が見えます。
 

2.企業への転職後の地位について

特許事務所と異なり、企業は、通常、各社員(弁理士)の紹介はしませんので、転職後の地位については明らかになっていません。大企業の場合は、50代の弁理士を採用することは稀であると思われます。一方、知財に力を入れ始めた中小企業は、中心的役割を果たしてくれるベテラン弁理士を求めていることが少なくありません。
他社の出願案件を代理することは基本的にはありませんし、自社案件でも特許明細書の作成業務や商標登録出願業務を行うことはあまりないでしょう。

3.50代弁理士が転職するために重要な事項

(1)実務経験
ほとんどの特許事務所は、50代の未経験弁理士を教育する意思も余裕もありません。そのため、実務経験は必須の要件と言えます。逆に、これまでの経験を活かして、事務所内の若手弁理士の教育係になることもあるでしょう。
年齢から考えて、少なくとも10年以上の実務経験は求められると思われます。

実務経験年数だけでなく、実務家としての経験実績や部下の育成、チームとしての動きをした事があるか、クライアントへの対応をどのような形で行っていたのか等、詳細をアピールする事で、より評価をしてもらえるのではないでしょうか。
   
(2)訴訟・係争経験
訴訟・係争経験は、特許事務所で長年弁理士をやっていても携わることがほとんどありません。そのため、これらの経験は必須ではありませんが、最低限の知識は必要でしょう。特定侵害訴訟代理業務ができる付記弁理士であれば、特許事務所にも有効な戦力と見てもらえると思います。
大企業の知財部や法務部からの転職であれば、訴訟経験はなくても少なくとも係争経験はあったりしますので、転職するときのアピール材料にはなるでしょう。

(3)知財契約(ライセンス)経験
最近は知財に関するライセンス契約に弁理士が従事することも増えてきましたが、経験の無い弁理士が多く、特許事務所としては、受任を断ったり、時間をかけて対応するしかありませんでした。
しかしながら、企業間の取引では契約書を作成するのが一般的であり、近年は知財の取り扱いを盛り込むことが多くなっていることから、特許事務所がこの作業を避け続けるのは得策ではありません。
 そのため、50代とはいえ、このような経験を持っている弁理士は、事務所としては貴重な存在になり得ます。

(4)人脈
50代であれば、これまでの社会活動において様々な人との人脈を築いており、これが転職後の仕事において有利に働くことが少なくありません。例えば、外国の現地代理人のネットワークや知財訴訟に強い弁護士、あるいは、出願依頼を見込める過去の取引先などです。
 また、学生時代の同級生なども、各組織において決裁権限を持つ重要なポストに就いていることも少なくなく、そのような人脈があるかを改めて確認しておくと、場合によっては転職の際のアピール材料になるかもしれません。

(5)他の資格(米国弁護士など)
弁理士以外の資格を持っているのであれば、場合によっては、転職後の業務において役立つ可能性があります。
例えば、過去に米国特許弁護士の資格を取得したのであれば、少なくとも日本弁理士よりも、外国案件の知識は豊富でしょうし、英語関係の資格を持っている場合も、現在の知財について国際化が進んでいる状況を考えると、非常に有用でしょう。特に、この年齢で英語関係の資格を持っている場合は、過去に取得してこれまでの実務で活用していることも多く、50代での転職でも有効な判断材料となると思われます。

4.まとめ

現在の特許業界においては、弁理士であって、かつ、多くの経験があったとしても、通常は70歳くらいで退職することがほとんどです。また、特許権や意匠権の存続期間は20年となっています。
そう考えると、転職先によっては、50代の転職にはややリスクがあることは否めません。50代での転職を希望する場合は、転職先に自分が活躍する場があるか見極めた上で、弁理士として周りが納得するような実務経験やアピール材料を身につけておきましょう。

今までの経験値やアピール材料は自分だけではなかなか見つけられない事もあり、第三者的立場の方に経歴診断をしてもらう事で、思わぬ気付きがあるかもしれません。一人での情報収集にも限界がありますので、誰かに相談してみるのも手です。専門の転職エージェントはその点プロの目を持っています。50代の転職支援実績があるかどうかなどを確認しながら、相談をしてみると良いかもしれません。

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