AIと会計監査
公開日:2017/11/24 | 最終更新日:2017/11/24
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最近では、オリンパスや東芝などの大手企業で会計不正が発覚しており、監査法人の監査業務における動向と責任問題が注目されるようになってきています。また、会計士の人材不足問題もあり、人口知能であるAIを監査業務に活用することが検討されてきています
AIを監査業務に、将来的にどのように活用していき、監査業務への影響がどうなるのかを確認していきましょう。
AIの活用事例
AIとは人口知能のことをいいます。日常生活において、AIは以下のような形で活用されています。
人工知能(AI)は、技術水準が向上しつつあるのみならず、既に様々な商品・サービスに組み込まれて利活用が はじまっている。身近なところでは、インターネットの検索エンジンやスマートフォンの音声応答アプリケーション である米Appleの「Siri」、Googleの音声検索や音声入力 機能、各社の掃除ロボットなどが例として挙げられる。ま た、ソフトバンクロボティクスの人型ロボット「Pepper (ペッパー)」のように、人工知能(AI)を搭載した人型 ロボットも実用化されている。
また、AIを活用した将来的に期待される事例として、以下のようなことが挙げられます。
発展の仕方は一通りではないが、以下では専門家が想定する一例を挙げる。
現在は、まず画像認識における精度の向上が実現しつつあるが、同じ視覚情報である動画へと対象が拡大し、さらには音声など視覚以外の情報を組み合わせた(マルチモーダル)認識が発展すると期待されている。
マルチモーダルな認識が実現すると、環境や状況を総合的に観測することが可能になるので、防犯・監視といった分野での実用化が考えられる。
次に、コンピューターが自分の取った行動とその結果を分析することが可能になり、高度な行動計画(プランニ ング)を導くことができるようになると考えられている。自動でのプランニングが可能になると、車両の自動運転 や物流の自動化といった分野での実用化が想定される
引用元
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/pdf/n4200000.pdf
監査法人のAI監査開発
日常生活に浸透し、様々な分野で活用が検討されているAIですが、監査法人の業界でも、AIを監査業務に活用しようという動きが、最近、活発化してきています。
各監査法人のAI監査開発の状況は以下のとおりです。
新日本監査法人(東京都千代田区、辻幸一理事長)は、東京大学大学院の首藤昭信准教授と共同で、将来の不正会計を予測する仕組みを7月に導入した。過去5年分の上場企業の財務諸表データを活用。企業が会計不祥事を起こした際の財務諸表の特徴を参考に、不正発生確率を算出。高確率とされた企業の担当会計士に連絡し、注意喚起する仕組みだ。
また、新日本監査法人がメンバーである世界4大会計事務所のアーネスト・アンド・ヤング(EY)では、AIを使い、クライアントの仕訳データや元帳・補助元帳のデータを分析するシステムを開発、世界の企業250社で導入済みだ。日本でも新日本監査法人を通じて、「すでに50社で導入されている」(大久保和孝新日本監査法人経営専務理事)という。
あずさ監査法人(同新宿区、酒井弘行理事長)でも、ビッグデータ分析により監査作業を高精度化・効率化する取り組みが進む。企業が記録・管理する財務および非財務データを入手。対象となるすべての取引について各データ間の関係性を分析し、異常がないか検証している。
またあずさ監査法人と同グループである米国KPMGではIBMの人工知能「ワトソン」の監査業務への導入を検討。日本でもあずさ監査法人の「次世代監査技術研究所」が協力し、AI導入研究を進めている。
PwCあらた監査法人(同中央区、木村浩一郎代表)は、10月末に「AI監査研究所」を設立した。木内仁志執行役副代表が中心となり、国内30人体制でAI活用について研究する。
各法人ともAI研究に着手しているが、現在のAIレベルはまだ低く「実際に監査業務に使えるのは5―10年かかる」(大手監査法人)との意見が多い。またAI監査が実現しても、最終的なチェックは人間の会計士が行わねばならず、業務の効率化がどこまで進むかも疑問だ。
とはいえAIの進歩は日進月歩で、近い将来、業務に耐えうるAIができる可能性は大きい。不正会計を減らすため、各法人の研究が実を結ぶことが期待される。
引用元
https://newswitch.jp/p/6729
AIが行える監査業務と不正会計の予測
現時点で、AIが監査業務として行える範囲は、実証手続きや内部統制の検証と過去の監査実績のデータ化になります。また、インターネット環境で、リアルタイムで監査対象となる証憑やデータをやりとりすることになります。これにより、クライアント先への往査の時間が縮小されるため、会計士の業務の効率化につながります。しかし、クラウド会計の登場で、この部分は大分、定着化してきています。
会計士の監査業務で大事なのは、不正会計を発見することにあります。よって、不正会計の予測をAIがどのように行うのかを確認してみましょう。
不正会計の予測では、インプットとアルゴリズムの要素を考える必要があります。具体的には以下のようになります。
インプット
不正会計の予測を行った研究は、公開情報のみで予測を行う場合が多く、公開されている財務諸表や株価などから不正会計に関連する財務(非財務)指標を算出した上で、インプットに用いています。会計学では、利益調整と呼ばれる経営者の裁量的な(意図的な)利益計上についての研究の蓄積があり、利益調整の測定値やその動機が不正会計の発生と関連性が高いことが多いため、インプットとして用いられます。利益とキャッシュ・フローの乖離(かいり)である会計発生高や、これをモデルにより推定し、推定値と実績値の乖離を計算した裁量的発生高などが利益調整の測定値として用いられます。
利益調整の動機としては赤字回避や減益回避、アナリスト予想の達成や経営者予想利益の達成などの利益ベンチマークの達成を動機とするケース、格付けの取得・維持・向上を動機とするケース、破綻回避、コベナンツの抵触回避などを動機とするケースがあります。このほか、経営者による株式売却・ストックオプションの保有、M&A、増資、IPO、MBOなど株価を意識しているケースも、利益調整などに影響を及ぼす状況として指摘されています。また、取締役会や監査委員会・監査役、株式保有構造などガバナンスの有効性も、利益調整との関連性が指摘されています。
アルゴリズム
不正会計と関連がある財務(非財務)指標に基づき不正会計の予測を行う際に、データからどのようにパターンを見つけるかについては、ロジスティック回帰分析(ロジットモデル)と呼ばれる比較的単純なモデルが使われることが多いものの、さまざまなアルゴリズムを用いる研究も行われています。このほか、近年注目を集めているディープラーニング(ディープニューラルネット)や勾配ブースティングなどの手法を不正会計の予測に適用するのも有効な手段と考えられます。
引用元
https://www.shinnihon.or.jp/shinnihon-library/publications/issue/info-sensor/2017-01-02.html
まとめ
財務諸表を作成するにあたり、会計ソフトや税務ソフトが計算処理を行い、自動的に数値を算定するしくみは既に出来上がっています。しかし、これも完全自動化ではなく、当然ながら、ソフトに必要な勘定科目と数字を入力する人がいて、成り立つ作業です。
一方で、AIはより人間に近い存在となっており、過去の財務データもとに検証や分析作業を行うだけではなく、会計士の監査業務の核となる不正会計の予測作業も可能となりはじめています。AIの登場により、職業会計人としての仕事を奪われる危機感もありますが、監査法人が生き残るためには、将来的にAIをどのように会計監査業務に生かしていくかを考える時代になってきたといえます。
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