企業が求める簿記資格取得者
公開日:2016/11/13 | 最終更新日:2020/07/10
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経理職への転職を考えた場合、簿記の資格を取得して履歴書に書けることがステータスとなっています。簿記の資格の就職や転職への影響、経理実務の仕事との関連性、簿記資格取得にあたっての内容について、確認してみましょう。
企業が簿記の資格取得者を求める理由
簿記の資格は経理職に必要な資格であるというイメージが強いです。 しかし、必ずしも、簿記の資格は経理職だけに必要な資格ではありません。 例えば、システムエンジニアの仕事で、会計システムの開発の案件があるとします。この場合、ITのスキルが必要であるのは当然ですが、簿記の3級レベルでも、履歴書に書くことで、会計のフローを理解しているということになり、アピールポイントになります。
また、営業所のマネージャーの仕事の応募があるとします。マネージャーは人の管理の他に、計数管理の業務も求められます。この場合も、簿記の3級レベルでも、履歴書に書くことで、利益の採算性が分かるというアピールポイントになります。したがって、簿記の知識は経理以外の業種でも必要であり、企業が求める資格となっています。
それでは、転職を考えた場合、簿記はどれくらいのレベルまで取得したらいいのでしょうか。会社の規模にもよりますが、会社会計の内容は簿記2級で学習します。企業は会社の組織と会計のしくみを知っている人を求めるため、通常は、簿記2級以上のレベルが求められます。
ただし、簿記2級を取得していれば、必ず転職に有利になるとはいえません。どんな仕事でもそうですが経験に勝るものはなく、簿記の資格を取得していなくても、経理実務の経験が長い人はたくさんいます。 あくまで、簿記の資格は経理の仕事を理解するためのツールであり、それまでの仕事のキャリアと人間性と合わせて、簿記の資格があれば、転職にプラスになると考えるべきでしょう。
簿記3級と経理実務の関連
日商簿記3級の学習内容と経理実務の内容との関連性について、確認してみます。 日商簿記3級では サービス業を対象とした商業簿記を学習します。仕訳、試算表、精算表の3つのテーマを中心に学習するので、このテーマで経理実務との関連性を確認してみます。
まずは、仕訳です。 仕訳は日商簿記3級の試験では、必ず勘定科目の指定があり、科目を選択して仕訳を行います。経理実務では、会計ソフトで伝票を用いて仕訳を行いますが、勘定科目は設定されています。 日商簿記3級の試験では、文章を読み取って、簿記上の取引を仕訳にしていきます。 経理実務では、資料から取引をイメージする必要があり、不明な部分は各部署に連絡を取って、仕訳を行います。
また、試算表です。 日商簿記3級の試験における試算表の作成では仕訳と集計力が必要になります。経理実務では、会計ソフトが自動で試算表を作成します。試算表では、勘定科目の残高確認や毎月の利益の推移を確認する作業が経理実務では必要であり、この力は日商簿記3級の学習で身に付きます。
そして精算表です。 日商簿記3級の試験における決算整理仕訳と集計力が必要になります。経理実務では、精算表は作成しません。ただし、決算整理仕訳は必要であり、貸借対照表と損益計算書は会計ソフトが自動で作成してくれますが、貸借対照表と損益計算書を見る目は必要となります。 日商簿記3級では、経理実務に必要とされる仕訳の力と貸借対照表と損益計算書の構造を理解するための作業を行っているといっていいでしょう。また、経理実務では、会計ソフトを用いるので、会計ソフトを操作するスキルが必要となります。そして、日商簿記3級では個人事業者を対象としています。個人の確定申告のための決算書の作成が最終的な目標となります。ただし、会社の経理実務においても、日商簿記3級の知識は必要であり、経理の基本的な作業は、日商簿記3級レベルでも充分に通用します。
簿記2級と経理実務の関連
日商簿記2級では、日商簿記3級とは対象が異なり、商業簿記では株式会社が対象となってきます。ここで、経営者と株主の関係を意識しながら、会社会計の知識を身につけていきます。株式会社の経理実務では、この会社会計の知識が必要となります。そして、会社組織が公表する貸借対照表と損益計算書のひな形は日商簿記2級で学習します。よって、会社における経理実務では日商簿記2級の知識が必要不可欠であるといえます。
また、日商簿記2級では、新しく工業簿記を学習します。工業簿記は製造業が対象であり、工場会計ともいいます。工業簿記の内容は初歩的な原価計算になります。原価とはいいかればコストであり、コストの考えかたを確認します。経理に限らず、会社において利益を出すことは使命であり、コストの考えかたを知っておくことは大事です。
簿記3級と2級取得のための学習について
日商簿記の取得のためにどれくらいの学習期間が必要となるか、確認してみます。日商簿記3級の場合で、2ヶ月ぐらいが必要になります。日商簿記2級の場合では、4ヶ月ぐらいが必要になります。日商簿記3級で簿記の知識に必要な基本項目を学習するので、まずは3級でしっかりと基本を身につけて、継続して2級を学習するとよいでしょう。
合格率は、通常3級が40%前後、2級が30%前後ですが、最近では難化しています。 経理実務の経験がある人は、比較的入りやすいですが、全くの初心者のかたはある程度、余裕をもって、学習していくべきでしょう。
簿記以外に経理実務に求められるスキル
経理実務においては、簿記の知識は最低限必要となりますが、簿記以外に必要な知識があります。具体的には、税金の知識です、具体的には消費税、法人税、所得税です。 消費税は個人事業者と会社の両方に関係する税金です。そして、仕訳を行う際に会計ソフトを用いていきますが、この際に消費税の知識が必要となります。 また、会社が納付する税金は法人税です。経理実務における経費の処理は法人税の考えかたとリンクしています。
そして、個人事業者は所得税を納付します。この所得税の計算では、所得計算の考えかたを理解する必要があり、ここでも経費の処理がポイントとなります。 さらに、経理実務では計算業務が多く、PCのエクセルのスキルは必須となります。
求人例
ある民間企業と会計事務所の簿記資格取得者の求人例を確認してみます。
1.民間企業
(業務内容)
■出納業務(毎日・毎月)・現金出納、経費精算、預金出納、伝票起票・出納伝票起票、国内外各支社の現金預金出納・銀行往訪(現金出納、通帳記帳など)・買掛金管理
■月次業務・請求書・経費内容確認およびデータ入力・財務諸表精査
(求める人材)
日商簿記2級程度の知識・決算業務の実務経験がある方は歓迎します。
2.会計事務所
(業務内容)
○月次監査・決算業務○伝票の照合○会計システムに入力されたデータの確認・照合
■経営者の相談にのり、アドバイスを行い、訪問企業の経営者と関係が構築できたら、経営に関する様々な悩みや困り事を相談される事もあります。
(求める人材)
日商簿記2級以上 ◇Excel、Word、会計ソフトの基本操作ができる方◇意欲のある方、人と接することが好きな方は歓迎します!
簿記2級が必要とされていますが、決算業務の経験とPCにスキルがあることもポイントでしょう。日常業務は簿記3級レベルで対応できます。
まとめ
最近では会計ソフトが発達してきて、簿記の知識がなくても経理実務が行えるような風潮があります。しかし、会計ソフトを使用することで計算業務は楽になりましたが、数字を読む力は簿記を学習しなければ、身に付きません。 簿記の資格を取得して、経理職への転職を検討してみてください。
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