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求人特許

特許分野の求人市場について

2020年7月15日
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公開日:2018/06/19 | 最終更新日:2020/07/15

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特許分野の求人市場は、最近大きく変化しつつあります。それは、最近の日本の特許出願件数が減っていることと無関係ではありません。そして、第4次産業革命により、状況がさらに大きく変わっていく可能性もあります。では、特許分野の求人市場がどのように変わってきたのか、そして、今後の特許分野の求人市場の動向はどのようになっていくのかについて探ってみましょう。

これまでの特許分野の求人市場

10年ほど前までは、企業による特許分野の求人はほとんどありませんでした。企業は、知財部員を社内である程度確保し、特許出願案件等は特許事務所に外注することが多かったからです。
そのため、この時代の特許分野の求人は、特許事務所による特許明細書作成者の募集がほとんどで、稀に、特許翻訳者や外国特許担当者の求人が含まれる程度でした。
  

最近の特許分野の求人市場

最近では、企業からの特許分野の求人も増えています。
アップルvsサムソンのような国際的な係争案件が増えて、他の競業企業や外国企業との争いに勝つ体力が求められてきているのが理由の1つでしょう。知的財産権に係るライセンス契約関係の仕事も増加傾向にあり、発明の権利化だけを考えておけばよかった時代と大きく異なって、今の企業の知財部には、知財の積極的な活用方法など、より戦略的な考え方が求められています。

一方、特許事務所ではどうでしょうか。今のところは、これまでと同様、弁理士や特許技術者としての募集で、仕事内容も特許明細書作成の仕事などがメインになっているようです。
しかしながら、企業が置かれていて変化の激しい昨今の状況をよく調べておき、企業側の要求にいつでも対応できるよう、特許事務所も知識と人材を揃えておく必要があるでしょう。現時点では、入所後に弁理士が仕事の幅を広げることで対応しているようですが、今後は、求人の際に、より細分化され特別な経験や知識をもった弁理士が募集される可能性もあります。

技術分野別の求人市場

(1)機械分野
機械分野は、構造物全般が関係する分野と言えます。構造物のみの「考案」を保護する実用新案も機械分野に属すると言えます。そのため、機械系工学部出身の弁理士は、より複雑な構造物や斬新な構造物を扱う傾向にあり、理系でその他の学部出身者や文系出身者は比較的簡単な構造物や個人発明家による日用品等を扱うことが多いでしょう。
以上のことから、機械分野の求人においては、必ずしも機械系工学部出身者でなければならないということは無いと思われます。

(2)化学分野
化学分野は、大きく分けて、一般化学、バイオ分野、製薬分野に分かれます。化学分野における特許明細書と特許請求の範囲の記載の仕方は独特で、内容面についても他分野の弁理士には理解しにくい面があるようです。図面は添付しないことも多く、メカニズムもはっきりしないことが少なくない、特異な分野と言えます。
そのため、一般化学やバイオ分野の場合は化学系理工学部出身者、製薬分野の場合は薬学部出身者を採用の条件にしているところがほとんどです。

(3)電気分野
電気分野は、大きくは一般的な電気部品・電気機器分野、ソフトウェア分野に分かれています。中小企業などは、まだアナログタイプの電気機器に関する発明を行っているところも少なくなく、この分野を専門とする弁理士は求人市場でも求められているようです。一方、最近は日本の大手電機メーカーの出願が減る傾向にあり、特許事務所としては対応に苦慮しているところも少なくないと思われます。
 しかしながら、第4次産業革命の代表格であるIoT、AIなどは、基本的にソフトウェアを必須とするものですから、今後は、電気分野の求人が多くなることも十分に予想されます。

求人の行い方について

従来、特許業界の求人の行い方は、新聞の求人広告、日本弁理士会ホームページの求人情報くらいしかありませんでした。現在は、特許事務所や企業のホームページ上の求人情報に加え、知財系情報サイトの求人情報、転職系情報サイトの求人情報などに掲載されることも多くなりました。その他、特許業界に特化した転職エージェントの数も増えているようです。
また、弁理士であれば、弁理士会主催のセミナーや各会派の会合等を通じて知り合った弁理士をスカウトするような方法もよく採られます。

今後の求人市場の動向

近年、電機メーカーと自動車メーカーなどが、IoTを利用した自動化運転技術に係る共同発明を行うことも増えており、新たな技術や考え方を伴う発明が多くなっています。そのため、依頼を受ける特許事務所としても体制を整えておく必要があります。

また、第4次産業革命のもう1つの側面である標準化が求人市場の動向に影響を与える可能性も指摘されています。各国において国際標準を他国より早く取得する試みがなされています。国際標準になった技術は、WTO(世界貿易機関)の加盟国全てにおいて国内標準にしなければならない、という取り決めになっているからです。国際標準化機関としては、ISO(国際標準化機構)が有名ですが、電気系ではITU(国際電気通信連合)及びIEC(国際電気標準会議)もあります。

したがって、国際標準になった技術は世界中で用いられることから、製品の製造・販売量は飛躍的に伸びることになり、それが特許権で守られた技術であった場合は、半独占的に販売することができるからです。なお、半独占的としたのは、「標準に係る特許権は、実施を希望する者に対して妥当な実施料でライセンスしなければならない」、ということになっているからで(これをFRAND条件といいます)、通常の特許権より独占性が薄れていることを示しています。それでも、世界各国で使用されるのですから、特許権者にとって非常にメリットのある制度と言えます。

日本でも、官民を挙げて、そして競合企業同士・異業種の企業同士が協力し合って、欧米各国と国際標準化を争っています。
今後の特許業界の求人市場においても、IoT、AI及び標準化に詳しい人を求める傾向が強くなると予想され、これらの知識を持っていれば、大きなアドバンテージになるでしょう。
日本国内の特許明細書作成を主たる業務としていた時代と異なり、知財の国際化がより進み、知財の価値評価や知財コンサルティングなどの考え方も生まれてきました。大きく成長する可能性がある分野として、一般人からも注目されている表れでしょう。

まとめ

人手不足は特許業界も例外ではありません。ここ数年の弁理士試験の合格者は200人台となっています。最近は、合格者の半数以上が会社員となっており、会社から登録料を支払ってもらえない合格者も多いことを考えると、登録して弁理士になっているのは、年間100数十人ではないでしょうか。

実力のある大手特許事務所でも、「特許に関する求人を出しても応募者が集まりにくい」という話を聞きます。実際に、知財系情報サイトの求人情報を見ると、何ヶ月も求人を出し続けている企業・事務所が多くあります。
 現在の知財を取り巻く環境を考えると、今後も、特許に関する求人件数が減る可能性は低いと考えられます。

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