SACTサムライマガジン
企業内弁理士

会社規模ごとの企業内弁理士の仕事

2020年7月10日
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公開日:2017/12/17 | 最終更新日:2020/07/10

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他の士業にも言えることですが、昔はほとんど無かった企業勤務の士業が最近増えてきました。特に弁理士は、特許や商標などのいわゆる「知財」が企業活動と密接に関連していることから、その傾向が強い、と言えます。

1.企業内弁理士の所属部署

企業内弁理士は、企業規模等によって所属部署が異なることが多いです。

(1)零細企業・小企業
一般に、零細企業・小企業であれば、弁理士は、総務部や経理部、あるいは、他の一見知財とは無関係と思える部署に所属していることがあります。このような企業に所属している弁理士は、弁理士として募集されて入社したのではなく、小企業等に勤務していた社員が何らかの理由で弁理士を志し、弁理士になった後もそのまま会社で仕事を続けているパターンが多いでしょう。小企業等は、「特許事務所におまかせ」というところが多く、自前の弁理士を雇おうという考えがあまりないからです。そのため、弁理士の人数は、1人だけのことがほとんどです。

(2)中堅企業
中堅企業の場合は、総務部や知財部に所属することが多くなります。会社として、知財の重要性を認識していることが多く、自ら募集して、新規で弁理士を雇い入れることもあります。もちろん、会社が弁理士を必要としていることを認識し、自分がその立場になろうと弁理士を目指す社員もいるでしょう。そのような社員が弁理士になった場合、通常は部門長として働くことになることが多いと思います。弁理士数は1人~数人というのが一般的でしょう。

(3)大企業
大企業の場合は、通常は知財部や法務部に所属することになり、弁理士が数名~数十名在籍していることも珍しくありません。特に法務部などの場合は、弁護士が所属していることもあります。大企業は、知財に関するより専門的な知識が必要とはいえ、部員も多く分業化が進んでいるため、スムーズに仕事を進められるのではないでしょうか。反面、管理職である弁理士社員は激務であるという話もよく聞きますので、弁理士とは言え、大企業では自分のペースで仕事を行うことは難しいのかもしれません。

2.企業内弁理士の仕事内容

 弁理士ですので、会社としても、知財全般について活躍してくれることを期待しています。企業規模によって所属部署等も違いますが、仕事内容も同様に差が出てきます。

(1)零細企業・小企業
 小企業の場合、はっきり言って、弁理士以外は知財に関して何も知らない、ということがほとんどでしょう。稀に、経営者が熱心に勉強して知財に力を入れている会社もあり、自社の弁理士と二人三脚で知財を事業に活かしている場合もあります。しかしながら、一般的には、弁理士以外は知財については何も知らない・判断できないことがほとんどですので、弁理士としてはマイペースで仕事ができるかもしれません。また、特許案件はそれほどなく、商標案件がメインになることが多いでしょう。弁理士以外の業務を兼務している事も多いようです。
 なお、小企業の弁理士の場合、出願等の実務自体は行ったことがないことが多く、手続は特許事務所に依頼して自分はその専門窓口になる、というパターンもあります。

(2)中堅企業
 中堅企業の弁理士は、最も仕事内容のパターンが多岐にわたるでしょう。中規模になると、知財を活用する体力が付いていて、企業の方針によっては、新しい知財活用にチャレンジしようとする場合があるからです。海外に販路を開拓することも多く、弁理士としても、やりがいはありますが、多忙な日々を送ることになります。出願についても、特許出願等は特許事務所に依頼する企業の方が多いでしょうが、一部、自社での出願を試みるケースも出てきます。

(3)大企業
 大企業の場合は、弁理士は、出願手続だけではなく、ライセンス契約等も処理しなければなりません。場合によっては訴訟対応等も必要となるでしょう。但し、分業化していますので、弁理士といえども、特許、商標、訴訟、ライセンス契約、外国などいくつかある分野のうちの一つ二つに特化して、業務を行うことが多いでしょう。ゼネラリストよりスペシャリストになることが求められると思います。チームとしての知財部・法務部で見ると、その企業の事業分野に限定した場合、ほとんどの特許事務所より知識・能力は上ではないでしょうか。そのため、多くの案件について自社で出願手続を行っているところも増えています。
大企業の弁理士は、社内の発明者とのやり取りが大変かもしれません。発明者は、自分の発明に思い入れがあるでしょうし、特許になると給与に反映されることも多いため、弁理士の説明をなかなか受け入れないことも起こるでしょう。

3.特許事務所の勤務弁理士との違い

 特許事務所は、いろいろな分野の顧客から依頼を受けるため、多くの新しい技術に真っ先に触れられる楽しさがあります。逆に、企業内弁理士は、自社の案件のみですので、ほとんど想定される範囲の技術内容しか扱えません。また、「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」に代表される組織特有の縛りが特許事務所よりは強いでしょう。大企業で働くことに喜びを感じられるのであれば、企業内弁理士として仕事を続けられるでしょう。
 逆に、そういう喜びを感じられず、組織で働くことに堅苦しさを覚えたりする場合は、特許事務所で働くべきでしょう。あるいは、中小企業で、待遇が良く完全に任せてもらえるので仕事が楽、と感じるような環境であれば良いかもしれません。
特許事務所勤務の弁理士の場合は、いずれは経営者(所長又はパートナー)になることがほとんどです。おそらく、企業で弁理士としての経歴を終えるという人は稀で、最終的には特許事務所に就職するか特許事務所を開業する人が、非常に多いでしょう。

4.待遇

 大企業の場合は、複数の弁理士が在籍しており、希少価値という面ではあまり強みがありません。資格手当は付くでしょうが、際立って高額の報酬が得られることはほとんどないでしょう。中小企業の場合は、基本的には、貴重な戦力とみなされると思いますので、他の社員より待遇が良いことが多いです。ただし、企業としての年収は大企業より低いところがほとんどですので、大企業と中小企業で、弁理士の待遇が大きく異なることはなさそうです。
 また、弁理士には登録料が必要となります。弁理士試験合格後は、実務修習を修了し、まず弁理士登録を受けなければなりません。これらの初期費用だけで、200,000円以上かかります。さらに、毎月15,000円の登録料を支払い続けなければなりません。これらを会社が負担してくれるかどうかも、弁理士として企業で働いていく上で重要な要素になるでしょう。

 上で述べた通り、仕事内容はかなり異なると思いますので、自分の性格・希望に合った企業で働くことができれば、企業内弁理士として長続きするのではないでしょうか。

 特許事務所と比較すると、良くも悪くもかなり差が付くと思います。特許事務所の給与は所長等の経営陣の意向でかなり異なりますので、給料が安い特許事務所に比べると、企業内弁理士の待遇は良いと言えます。一方、給料が良い事務所や事務所の経営陣になると、企業内弁理士の倍以上の報酬を得ている人も少なくありません。実力次第で給与が上げられる事務所もあるようです。

5.まとめ

 弁理士を志している人は、「自分で道を切り開こう」と考えている人がほとんどです。ですので、昔は企業内弁理士として組織に属している人はあまりいませんでした。一時期、弁理士数が増え続けた結果、大企業でより安定した地位を得ようとして企業内弁理士も多くなったのです。
 自前の弁理士部隊を作り上げた企業は、このままの体制で知財業務を進めようと考えているでしょうが、弁理士数が増えない最近の状況を考えますと、企業内弁理士が増加し続けることは考えにくく、逆に減り始めたときに、特許事務所への依頼を増やすのか、企業内弁理士への待遇を向上させて他から弁理士を募るのか、興味のあるところです。

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