弁理士の年収事情をポジションごとに解説します!
公開日:2017/03/14 | 最終更新日:2023/04/14
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世間一般では、弁理士を含め、士業の年収は高いと考えられています。確かに、数十年前は、1,000万円以上の年収は確実であったようですが、多少変動があるようです。現在の弁理士の年収はどのようになっているか、見ていきましょう。
特許事務所の弁理士
(1)所長
通常、特許事務所のトップですが、会長やオーナーなど、別のトップがいる場合もあります。そのため、所長と言えども、状況によって年収は大きく異なります。大手特許事務所の所長の場合は、数千万円~数億円が一般的な年収です。大手特許事務所の所長の場合、節税対策で別会社を経営していて、そこからも収入を得ることができますので、実態はわかりにくくなっていますが、かなり高い年収を得ているでしょう。
中規模特許事務所の場合、数千万円~1億円が一般的な年収です。中規模の事務所の場合、経営が軌道に乗っているため、それなりの年収が得られます。小規模特許事務所の場合、年収は数百万円~数千万円です。開業当初の事務所は売上があまりありませんので、所長であっても年収が安くなります。通常は、数年で事務所が軌道に乗りますので、平均的には1,000万円前後でしょう。
(2)パートナー
法人化した特許事務所である特許業務法人は、複数のパートナーによる共同経営という形態をとっています。そのため、1人が独占的に高額の年収を得られることは少ないです。通常は、数百万円~数千万円の年収でしょう。パートナーの中でも所長的な立場である代表パートナーの年収は1,000万円を超えることが多いです。
近年は、高度かつ総合的なサービスの提供を求める企業のニーズを意識してか、特許業務法人化する特許事務所が増えました。事務所の経営陣になって高収入を得たいのであれば、特許事務所より特許業務法人に入所するほうがよいでしょう。
(3)勤務弁理士
①特許弁理士
特許弁理士は、発明者との面談、特許明細書の作成、特許出願手続とその中間処理(拒絶理由通知対応など)が主な業務です。勤務弁理士に占める割合でいうと、この特許弁理士が一番大きくなります。件数は多くありませんが、特許庁の判断について争う審決取消訴訟や、特許権侵害行為に対する差止請求や損害賠償請求等に係る侵害訴訟の対応も行います。なお、弁理士は、所定の研修を受け、特定侵害訴訟代理業務試験に合格すると、その旨の付記登録をすることで、弁護士と共に、代理人として侵害訴訟に関する手続を行うことができます。
特許弁理士の年収は、事務所によって大きく異なり、500万円から1,500万円が一般的でしょう。実務能力が給与に反映される事務所であれば、こなしている業務の数・実績によって、1,000万円を超える年収を得ることは十分に可能です。ただし、実務能力がない弁理士や実務能力が給与に反映されない事務所に勤務している弁理士の場合、500万円前後の年収しかないこともあります。
所長の年収は、上で述べたとおりですので、そのような弁理士は、独立開業の道を選ぶことも多いです。
②商標・意匠弁理士
弁理士は理系の資格と言われていますので、商標・意匠弁理士の数は、特許弁理士よりかなり少ないです。令和4年度弁理士試験合格者の内訳は、理系76.7%に対し、文系15.0%となっています。しかしながら、出願件数は特許出願が約290,000件に対し、商標登録出願・意匠登録出願が約220,000件と、約75%の件数になっています。
そのため、弁理士1人あたりの処理件数や対応する顧客数は、商標・意匠弁理士の方が多く、特許事務所において重要な地位にいる場合があります。法学部出身であれば、訴訟対応に長けている方もいる事があります。
年収は、特許弁理士と同様500万円~1,500万円が一般的ですが、弁護士資格も持っていたりする場合は、2,000万円を超えることもあります。一方で、商標においてはその分野に特化し、システム化を進めて大量に案件を処理できるような事務所も出てきており、そのような事務所の場合は処理件数が多くても年収が高くない場合もあります。
③外国案件弁理士
国内の出願件数が伸び悩む一方、外国出願の件数は増加傾向です。そのような事情を反映して、最近は、特に大手特許事務所で、外国案件を専門に扱う弁理士が在籍しています。英語力を活かすために、自ら希望して外国案件弁理士になる場合もありますが、どちらかというと所属事務所の事情で外国案件を扱うようになることが多いようです。
年収は、500万円~1,000万円が平均的でしょう。特許翻訳も行えると1,500万円前後の年収が得られる場合があるようです。
④事務弁理士(事務出身)
事務弁理士は、案件管理や所内の連携役、権利移転などの方式的な登録申請を行います。もともと事務担当であった所員が、弁理士試験に合格し、そのまま事務手続を続行するというパターンが一般的です。弁理士数が多い大手特許事務所に勤務している場合が多いでしょう。
年収は、400万円~1,000万円です。事務手続と併せて、商標関連の手続を行うこともあります。
以上にように、特許事務所の弁理士においても、ポジションによって年収の差があり、かつ年収幅もかなり広いと言えます。特許事務所の規模に関わらず、業績による所もありますが、個々の経験値やパフォーマンスなどによって、その差が出ているようです。ただし、全体としての水準は今回記載した年収幅の中でも高め安定といった所のようです。
企業の弁理士
近年の弁理士試験は、受験者・合格者共に会社員が最も多く、約50%を占めています(特許事務所勤務者は約35%)。これは、法科大学院を経由して受験する割合が多い司法試験はもちろん、公認会計士など他の難関国家資格と比較しても、突出して大きい割合です。知財がいかに企業において重要な分野であり、また、特許事務所以上に、社内で知財が研究されているかを暗に示しています。
巨大企業であれば、数十人以上の弁理士(又は弁理士試験合格者)がいると言われ、資格手当が付いたとしても、高額ではないようです。そのため、肩書にもよりますが、年収は、500万円~1,000万円の範囲が多いでしょう。
中小企業の場合は、弁理士は1人~数人しかいませんので、場合によっては、1,000万円を大きく超える年収が得られることがあるようです。
現在でも企業勤務は安定していると言えますが、高収入を期待する企業弁理士は、独立開業するか、まず実務経験を積むために特許事務所に転職するようです。
年収の上がり方
弁理士でも、原則として定期昇給により年収が上がっていくのがほとんどですが、売上額に応じて年収が上がる所もあります。個々のパフォーマンスによって上がり幅には差がありますが、大きく上がるパターンとして、特許事務所の弁理士の場合、①弁理士試験に合格したとき、②役職がついたとき(マネージャーやパートナーになったとき)が考えられます。特に、パートナーになったときは年収が2倍以上に増えることもあります。企業の弁理士の場合、事務所の弁理士ほど大きく年収が上がることは少なく、資格手当も、付く会社と付かない会社があるようです。資格を活かして、他の社員と同様に、会社に貢献できたときに初めて上がることが多いでしょう。
また、最近は、他の弁理士と差別化を図るため、特定侵害訴訟代理業務試験に合格して、付記登録を受けたり(通称、「付記弁理士」)、中小企業診断士の資格を取得して、中小企業の顧客獲得を狙うこともあります。
まとめ
いずれにしても、年収の額、年収の上がり方は、事務所や企業によって大きく異なります。弁理士は人数が少ないですので、弁理士同士の繋がりで、年収に関する情報を共有することが多くもあり、共同で特許業務法人を設立したり、独立開業するケースもあります。
その他、より高い年収を求めて転職をするケースや、事務所や企業の業績により年収が下がってしまい、転職をするケース、より経験値を積む事で自身の市場価値を高める為に転職をするケースなどもあるようです。
年収に関する情報は、弁理士専門の転職エージェントも把握しており、相場感など参考になる情報も得られる可能性は高く、転職エージェントに相談してみるのも手です。
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