SACTサムライマガジン
弁理士研修

弁理士の研修内容について

2017年6月27日
samurai13

公開日:2017/06/27 | 最終更新日:2017/06/27

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弁理士に限らず士業は頻繁に行われる制度改革や法改正の内容を熟知しておく必要があります。また、弁理士は、最新の審査実務・訴訟実務を常に研究しておかなければなりません。
こういった状況を考慮して、日本弁理士会は、会員向けに各種研修を設けています。研修内容について見ていきましょう。

1.実務修習

平成20年度の合格者から、実務修習を受けなければ弁理士登録ができないようになりました。司法試験合格者の司法修習に相当する制度です。
実務修習は、毎年、合格発表のある11月に申込受付が行われ、12月から翌2月にかけて、東京・大阪・名古屋で行われます。まず、12月上旬にダンボール箱に入れられた大量の研修資料が届きます。

実務修習は、e-ラーニングと集合研修で構成され、集合研修は、まず各回の期限までに起案を提出しなければなりません。そして、集合研修に参加して解説講義を聴いたり、5人前後のグループでグループディスカッションを行ったりします。起案が基準を満たしていない場合は再提出を指示されます。稀に再々提出が必要な場合もあります。さらに、何度提出しても起案が認められず、修了できなかった人がいた、という話を聞いたことがあります。現在は、再々提出が認められなければ修了できないことになっています。

同じ期間内に、かなりの量のe-ラーニングも併せて受講しなければなりません。集合研修は、土曜の朝から夕方まで行われるコースが一般的であるため、実務未経験者や仕事が忙しい人は、終業後と日曜に起案とe-ラーニングをこなさなければならず、実務修習の期間はかなりきついでしょう。修了すれば弁理士になれる、という思いでがんばるしかありません。

無事、実務修習を終えると、3月中旬に、修了式が行われ、修了証書が授与されます。弁理士登録するためには、この修了証書のコピーが必要となります。

2.基礎力サポート研修(新人研修)

実務修習を修了して弁理士登録をしたばかりの人を対象に、さらに実務の基礎を勉強するための研修です。下記の継続研修の単位に含めることはできませんし、受講料がそれなりに高いこと及び参加は任意であることから、参加者はそれほど多くありません。
ただし、内容は、審判手続や鑑定・判定の実務、外国出願など弁理士業務に役立つ講義が多いようです。受講した内容を仕事に活かすことができれば、弁理士としての良いスタートダッシュになるかもしれません。

3.継続研修

継続研修は、平成20年度から弁理士法の規定において、全弁理士に履修する義務が課せられた研修です。通常、弁理士業界で「研修」というと、この継続研修を指します。ですので、継続研修については詳細にご説明します。

(1)研修の目的
近年、知的財産を取り巻く環境は、国際化と技術の高度化・複雑化が進み、弁理士の負担・責任が非常に大きくなっています。このような状況において、弁理士の自己努力のみに依存していれば、弁理士業界全体の能力が低下するおそれがあるばかりか、出願人の信頼を失い、ひいては、日本の国際競争力をなくしかねません。

そのため、継続的に研修を受けることを義務化し、高度な専門家としての弁理士の能力を維持・向上させることを目的として、継続研修が設けられたのです。

(2)研修期間
継続研修は、弁理士登録された翌年の4月から研修期間がスタートし、5年間が一つの研修期間となっています。この間に所定の70単位を履修しなければなりません。5年間の研修期間が終わると、新たな5年の研修期間がスタートし、原則として、弁理士登録が抹消されるまで繰り返し研修を受けなければなりません。

(3)研修の種類
継続研修は、大きく2つの研修に分かれます。倫理研修と業務研修です。

①倫理研修
倫理研修は、弁理士として必要とされる倫理についての研修です。70単位のうちの10単位を占めており、e-ラーニングの5単位と集合研修の5単位に分かれます。
集合研修は、5年の研修期間の最終年に、数回に分けて開催され、グループディスカッション形式になっています。

②業務研修
業務研修は、必修科目と選択科目で構成されます。業務研修だけで、倫理研修10単位を除く60単位を取得する必要があります。

a.必修科目
必修科目は、法改正が行われた場合の「改正説明会」などが該当します。そのため、弁理士会会長の指示により、随時設定されることが多いです。
b.選択科目
選択科目は、弁理士が自由に選択してよい科目です。国内外の知財に関連するあらゆるテーマが取り上げられています。選択科目の研修としては、主に集合研修、e-ラーニング及び認定外部機関研修があります。
    
集合研修は、東京・大阪・名古屋で行われることが多く、その他の地区はTV配  信で受講することが一般的です。単位数は、1時間あたり1単位で計算されます。なお、東京は弁理士数が非常に多い(弁理士の約6割を占める)ため、申込開始後すぐに満員になることが多いようです。

e-ラーニングは、日本弁理士会のウェブサイトから会員専用ページにログインしてオンデマンドで受講することができるので便利です。仕事で今まで扱わなかった分野の相談を受けた場合など、オフィスのパソコンからすぐに知識を得ることができます。e-ラーニングの途中に、何度か小テストが含まれていて、基準点に達しないと次に進めない仕組みになっています。ただし、基準点に達しなくても何度もチャレンジできますので、特に不都合はありません。
    
認定外部機関研修は、日本弁理士会が認定した外部機関が主催する研修です。形式は集合研修と同様ですが、受講後所定期間内に200字~400字のレポートを提出しなければなりません。
    

4.能力担保研修

能力担保研修とは、特定侵害訴訟代理業務試験を受験するための研修です。特定侵害訴訟とは、主に知的財産権を侵害する者に対する訴訟をいいます。従来、弁理士は特定侵害訴訟の代理人になることができず、補佐人として訴訟手続に参加できるに過ぎませんでした。しかしながら、知的財産権の侵害訴訟には高度の専門性が必要となり、弁護士だけでは負担が大きかったことから、平成15年度から特定侵害訴訟代理業務試験が始まりました。これにより、特定侵害訴訟代理業務試験に合格し、合格したことが弁理士登録簿に付記された弁理士は、弁護士が代理人として選任されていることを条件に、代理人として訴訟手続を行うことができるようになったのです。

能力担保研修を受講するためには、民法と民事訴訟法の基礎知識を持っていることが条件になっています。一般的には、能力担保研修に先立って行われる「民法・民事訴訟法に関する基礎研修」を受講することで、基礎知識を持っていることを示すことが多いです。

能力担保研修は、例年4月から8月頃まで隔週で行われ、訴状や答弁書の書き方等の講義を受けます。実務修習と同様、かなりハードな研修と言えるでしょう。修了すると、特定侵害訴訟代理業務試験の受験資格が得られます。

5.まとめ

弁理士試験に合格した後は、段階的にいろいろな研修があることをお分かりいただけたでしょうか。ほとんどが無償の研修であり、e-ラーニングも充実していることから、弁理士がスキルアップできる体制は整っているといえます。ただ、特に東京では満員になる集合研修が多くなっていますので、申込者数に応じて会場を変えたり、TV配信などを利用して多くの弁理士が受講できる体制を整えるべきでしょう。

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