企業法務を扱う弁護士について
公開日:2017/01/30 | 最終更新日:2020/08/12
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そもそも企業法務とは
企業法務は弁護士業界においては、一般民事事件との対比として使用されることが多い言葉です。
その文言通り、基本的には、企業を相手とする法律業務を意味します。
企業を相手とする、というのは典型的な業務としては企業の顧問弁護士に就任し、日常的に発生する法律相談、契約書チェック等を中心業務として行います。
また、企業が何らかの訴訟に巻き込まれた場合はその訴訟対応も行うことになります。
企業法務を扱うことのメリット
企業法務を取り扱う法律事務所の最大のメリットは。収入が安定していることでしょう。
月々●円といった顧問料を安定して得られることは、事務所の経営の安定につながるので、個人事業主である弁護士としてはその収入を当てにすることができる、というのは非常に大きなメリットです。
また、企業の方とのお付き合いは、一度切り、ということは少なく、特に顧問弁護士になったような場合には、当該企業の担当者の方とメール・電話・打ち合わせ等を重ねることになります。そうすると、弁護士と担当者の間に信頼感が発生し、その信頼感を基に、結託して問題の処理に当たることができるのです。
このメリットは、いざ訴訟になった場合や訴訟の前段階で交渉を行う場合、阿吽の呼吸で和解をすることができる、ということです。
信頼関係が成立していない一般の方、特に一回限りのお客さんでは、中々いいタイミングで依頼者に最適な和解というものをすることは難しいといえます。
こういった手法がとれるということは、弁護士にとって、ストレスを抱えない、という意味で非常に重要です。
企業法務で要求されること
(1)スピード
企業法務で重要なのは、上記したような顧客との関係をいかに構築するか、ということです。司法試験に合格している以上、一定水準以上の法律知識があることはもちろんですが、その知識の正確性はもちろんのこと、スピードが非常に要求されることになります。
一般の方の事件(いわゆる一般民事事件)においては、(場合によってはそうではない場合もありますが)法律問題が起こった際に、その問題を取り巻く状況がオンタイムで変わる、ということは中々ありません。仮にそのような状態であるのなら、訴訟手続よりも調停や審判など、違った手続に進んでいることになるでしょう。
しかし、企業の法務はオンタイムで日々変化します。
極端な話、営業の方が取ってきた契約についての契約書などというのはいつ、どんなタイミングで必要とされるかはわかりません。
この点の法務のチェックが遅れることで、契約不成立、等ということも十分に考えられるのです(ある意味、こういった事態を想定し、これを未然に防ぐ手段として、大手企業等は、企業内弁護士、いわゆるインハウスロイヤーを採用しているともいえます。)。
送られてきた契約書チェックの期間は厳守、しかもこれを1社ではない数多くの顧問先からの依頼を同時にこなすスピードと要領が求められるといえます。
特に中小企業であれば、法務部すら存在しない会社が数多く存在します。そのような場合、まさに上記のような可能性が生じることになるので、担当者へのフィードバックのスピードはなお一層求められますし、場合によっては、土日であろうと返信をその日のうちにしなければならないような場合も出てきます。
正確さ
上記したスピードと両立させなければならないのは正確さです。
弁護士個人個人の武器となるのは、一般的な法律知識、というよりも一定の分野についての専門的な知識、つまりは専門性であるといえますが、企業法務を扱う法律事務所の場合、例えブティック型の法律事務所であったとしても、訴訟などであればその専門知識のものを受任することになりますが、一般的な顧問契約の範囲内の業務、具体的には契約書のチェックなどについては、一般的な知識が要求されます。
司法試験レベルのものではなく、実務の必要に迫られた場合に本などを通じて、常に向上心を持ち、知識を蓄積することで、正確な回答を企業に対してすることが、顧客の獲得につながります。
プライドを捨てる
同時に、企業法務で特に求められるのはプライドを捨てる、ということです。
当たり前のことですが、弁護士は司法試験に合格しています。そのため、プライドが高い弁護士は少なくありません。
最も、弁護士は法律のプロではあっても、あくまで依頼者の仕事に就いては素人です。依頼者に分からないところは分からない、と明らかにして先入観を持たず、素直な意見、率直な意見を聞く必要があります。企業ごとに様々なビジネスを展開しており、そこに専門性が存在する以上、すべての業種について、プロになる、ということはおよそ不可能です。しかし、ふんぞりかえって、実態を知ろうとしない弁護士がまだまだ存在し、かつ、そのことを十分に認識していない弁護士も少なくありません。
そんな中で謙虚な姿勢で依頼者に向き合い、情報を聞き出した上で、必要とあれば、官公庁などに実際の運用を尋ねる、といった聞くべきことをしっかりときき、正確な情報を依頼者に提供し続けることこそが、企業の信頼を勝ち得ることになり、結果として、企業法務で成功している弁護士になるコツといえます。
上場企業の特殊性
上場企業相手の企業法務を行う場合、日常的な法律相談などの業務に加え、株主総会対策が重要な業務になります。
株主総会は、基本的に6月に集中するので、その時期は例えば、株主総会の予行演習を行い、取締役に対して質疑応答の練習を行ったり、質疑応答の問答集を作成する等しておくことが必要になります。その時期は、株主総会対策、という特殊な業務に多くの時間を割かれることになります。
まとめ
一般民事事件と異なり、企業法務は継続的な業務を日常的に行うことになります。安定した収入が望めたり、いざ和解の際にスムーズにいくところがある反面、スケジュールが非常にタイトだったり、業務量が膨大だったりという面があります。
もっとも、企業法務を扱っている法律事務所が、一般民事をまったくやらないということはないのに対し、一般民事専門の法律事務所は、中々企業法務を扱うチャンスには恵まれません。最近では中小企業向けの企業法務も拡大しつつあり、一般民事をメインに扱う法律事務所でもそのような業務に進出しているケースも見受けられますが、ベンチャー特化であったり、規模感の差等による業務内容の違いなどに戸惑う可能性もあります。
自身のやりたい業務と、今後の可能性を踏まえて就職活動を行うべきでしょう。
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