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弁理士特許業務法人

弁理士個人事務所と特許業務法人

2016年12月15日
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公開日:2016/12/14 | 最終更新日:2016/12/15

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弁理士事務所のうち、もっとも多くを占めるのは個人事務所です。しかし、最近増えつつあるのが特許業務法人という事務所の在り方になります。これは、簡単にいえば個人事務所を法人化する制度のことです。
もっとも、特許業務法人は個人事務所とどのように違うのでしょうか。メリットや設立方法についても気になるところですね。そこで、今回は「特許業務法人」についてご紹介します。

特許業務法人とは

特許業務法人は、特許事務所に複数の弁理士が所属している場合に、事務所を法人化する制度のことです。
特許業務法人の制度は平成12年に設けられましたが、創設の背景には知的財産固有の問題点がありました。そもそも特許などの知的財産は、売買代金債権のように短期間で消滅する権利ではなく、存続期間が数十年にわたります。そのため、弁理士による顧客へのサポートもそれだけの年数を要します。しかし、これだけの長い期間ですから、途中で弁理士が死亡したり事務所を移転してしまったりして、最後まで対応してもらえないということが多々ありました。

また、この点について、特に大規模事務所では、外部から見て誰が営業主体を明らかにするとともに、知的財産関連業務を永続的に行うため、法人になりたいという要望が数多くあったのです。そこで、特許事務所を法人化することで、長期的に対応することが可能な仕組みを作り上げることにしました。

弁理士事務所の法人化による効果は、単に会社という状態を作り出すだけにとどまりません。事務所が法人化することで、今まで弁理士という「人」がやっていた仕事を「法人」自体が行えるようになりました。そのため、弁理士業務を法人名において行うことも可能になっています。

特許業務法人のメリット

特許事務所を法人化した場合、ほかにもメリットが多く存在します。ここではその一部をご紹介しましょう。

□経営主体の明確化
特許業務法人化のメリットとしてまず初めに挙げられるのは、なんといっても経営主体を明確化できることでしょう。「経営主体の明確化」というとなんだか難しいですが、具体的には、預金や資産を個人名義でなく法人名義で管理することができ、純粋な経営面を把握しやすくなることをいいます。
経営主体の明確化それ自体もメリットですが、ここから派生した利点も存在します。それは、信用力の向上です。クライアントに対しても、融資を受ける銀行に対しても、一般的に法人の方が信用を得やすいといえます。これは大口取引をするときに特に重要になってくる点です。

□役員報酬を経費にできる
二つ目のメリットとして、代表取締役や取締役の役員報酬を経費にすることができるということが挙げられます。
まず、個人事務所の場合を考えてみましょう。ここで、そもそも課税対象は「売上から経費を引いた金額」になります。そして、個人事務所おいて事業主の給与は経費に含まれないため、売上に含まれ課税されてしまいます。
一方、法人の場合には以下の3種類が経費として認められます。
・定期同額給与:一定の期間、同額で支払われる給与
・事前確定届け出給与:事前に税務署に届け出た給与
・利益連動給与:その事業年度の利益に関する指標を基準にして、役員に支払う給与
役員給与は「定期同額給与」として経費にカウントされ、課税対象にはなりません。そのため、節税が可能になるのです。

□税金に関する優遇措置
個人事務所を法人化することで、税金の優遇措置を受けることもできます。具体的には、資本金が1000万円未満であると、会社設立後1事業年度は消費税がかかりません。
また、国内のクライアントが特許業務法人を利用する場合、源泉徴収をされずに弁理士事務所を利用することができます。これは逆にいえば、弁理士側は売り上げに源泉税が課されないということです。

特許業務法人のデメリット

一方、特許業務法人にすることでデメリットも生じます。

□法人として税金が課される
個人事務所から法人になると、今までとは別の税金がかかってきます。それが法人税と地方税です。
まず、法人税とは法人の所得にかかる税金のことです。これは所得金額と資本金によって税率と控除額が決められており、資本金1億円未満の場合には、課税所得金額が800万円以下で15%、800万円以上25.5%の法人税がかかります。資本金が1億円以上ですと、法人税は25.5%になります。

次に地方税(都道府県税、市民税)とは、地方自治体が法人に課す税金のことです。これは、所得の有無にかかわらず課税される「均等割」と法人税額の一定額が課される「法人割」にわかれます。具体的には、均等割りとして一律約7万円、法人割として法人税額の20%程度を支払う必要があります。

□利益相反行為に対する規制強化
弁理士は、受任している事件の依頼者や相談者と利害が対立する場合には、関係する事件を受任することができません。この状態を「利益相反」といい、弁理士法は利益相反にあたる行為を禁じています。
弁理士事務所が特許業務法人になると、事務所自体がこの利益相反を禁じられますから、その範囲は必然的に広くなってしまいます。そのため、事件を受任できない場面も増えてしまうのです。

□法人会費の負担増
特許業務法人になると、法人ごとに法人会費がかかります。具体的には届出料20,000円、法人会費10,000円です。個人の登録料35,800円、会費15,000円と比較すれば非常に安いものですが、一応出費にあたるため、デメリットといえるでしょう。

特許業務法人で働くということ

□働く上でのメリット
特許業務法人は、いまだ特許事務所全体の15分の1程度しかありません(2013年、弁理士白書)。しかし、個人事務所と比較して、特許業務法人で働くことにはメリットがあります。
まずは福利厚生が整備されているという点です。法人事務所の場合、健康保険、厚生年金は強制的に加入することが義務付けられているからです。
また、自分の収入と事務所の財産をきっちり分けることができるというのも法人化の利点でしょう。個人事務所の場合には、どれが自分の生活費で、どれが事務所の経費なのか不明瞭な場合が多いからです。

□特許業務法人と個人事務所の兼業
特許業務法人に所属しながら、個人として仕事をしたいという人もいるでしょう。しかし、このような兼業形態は許されるのでしょうか。
この点、弁理士会の回答によれば「特許業務法人に所属している場合は、社員であれば、他の社員の同意を得るか、または定款に別段の定めがあれば、個人事務所を設立することが可能」であるということです。また、特許業務法人に雇用されている使用人弁理士の場合には、就業規則等で禁止されていなければ兼業が可能です。

特許業務法人の設立方法

では、どのように特許業務法人を設立するのでしょうか。
設立方法については、合名会社と同じです。まず、2名以上の弁理士を社員として決定し、社員が共同して定款を作成します。もちろん、社名や事務所の所在地なども決めなければなりません。最後にこれらを登記することで設立が完了します。
設立自体は自分でもすることできますが、定款や書類の作成に時間がかかるため、司法書士事務所に頼むという人が多いです。

まとめ―特許業務法人はメリットが多い

法人化は手続きこそ煩雑ですが、メリットも数多くあります。事務所を設立する側にとっても、働く側にとっても、利点の多い制度なのです。2人以上の事務所の場合には、特許業務法人にする道を考えてみてはいかがでしょうか。

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