法律業務に役立つ資格(ビジネス実務法務)
公開日:2017/10/31 | 最終更新日:2020/09/03
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法律業界の資格としては、司法試験や司法書士試験がありますが、一般人が目指すには、ハードルの高い試験です。法律の基礎から学び、会社で法律業務に生かせる資格として、ビジネス実務法務検定があります。この試験の内容と法律業務との関連性について、確認してみましょう。
ビジネス実務法務検定の概要
ビジネス実務法務検定は3級から1級まであり、各級のレベルは以下のようになります。
•1級のレベル
業務上必要な法律実務知識をビジネス全般にわたって持っており、その知識に基づいて多面的な観点から高度な判断・対応ができる。(実務的対応能力としてのアッパーレベルを想定)
•受験対象
法務部門に携わる方
•2級のレベル
企業活動の実務経験があり、弁護士などの外部専門家への相談といった一定の対応ができるなど、質的・量的に法律実務知識を有している。(知識レベルとしてのアッパーレベルを想定)
•受験対象
社会人全般および学生
(特に管理職(候補)の方におすすめします)
•3級のレベル
ビジネスパーソンとしての業務上理解しておくべき基礎的法律知識を有し、問題点の発見ができる。(ビジネスパーソンとして最低限知っているべき法律実務基礎知識を想定)
•受験対象
社会人全般および学生
引用元:http://www.kentei.org/houmu/miryoku.html
1級・2級・3級の範囲に該当する法律および関連法令を出題範囲とします。
•論述問題(共通問題・選択問題とも)
•制限時間は共通問題 2時間・選択問題 2時間
•共通問題2問・選択問題2問の200点満点とし、各問題ごとに得点が50%以上でかつ合計点が140点以上をもって合格とします。
•合格者には「ビジネス法務エグゼクティブ®」の称号が与えられます。
•共通問題(2問必須)
民法および商法を中心に、できるだけ全業種に共通して発生することが考えられる法律実務問題を出題します。
•選択問題(4問中2問選択)
特定の業種に関連する一定の法律をクローズアップして出題します。法務実務の担当者が遭遇するであろうさまざまな場面を想定して出題します。例えば、以下の事例などにより実務対応能力を試験するものとします。
1.取引上のトラブルを処理
2.取引関係に立たない第三者とのトラブルを処理
3.法務関係の上司や弁護士などの専門家に法的トラブルの顛末・処理方法を報告
4.予防法務的観点からトラブルになりそうな問題に対応
2級
3級の範囲および2級公式テキスト(2020年度版)の基礎知識と、それを理解した上での応用力を問います。
•マークシート方式
•制限時間は2時間
•100点満点とし、70点以上をもって合格とします
•合格者には「ビジネス法務エキスパート®」の称号が与えられます。
<2級公式テキスト(2020年度版)の目次>
1.企業取引の法務
•ビジネスに関する法律関係
•損害賠償に関する法律関係
2.債権の管理と回収
•債権の担保
•緊急時の債権回収
•債務者の倒産に対応するための処理手続
3.企業財産の管理・活用と法務
•流動資産の運用・管理の法的側面
•固定資産の管理と法律
•知的財産権の管理と活用
4.企業活動に関する法規制
•経済関連法規
•消費者保護関連の規制
•情報化社会にかかわる法律
•事業関連規制
•企業活動と地域社会・行政等とのかかわり
•企業活動にかかわる犯罪
5.株式会社の組織と運営
•株式会社のしくみ
•株式会社の運営
6.企業と従業員の関係
•労働組合と使用者との関係
•労働者災害補償保険法(労災保険法)
7.紛争の解決方法
•紛争の予防方法
•民事訴訟手続
•その他の紛争の解決方法
8.国際法務(渉外法務)
•国際取引に関する法的諸問題と対応のポイント
•国際取引に関する個別の法的諸問題
3級
3級公式テキスト(2020年度版)の基礎知識と、それを理解した上での応用力を問います。
•マークシート方式
•制限時間は2時間
•100点満点とし、70点以上をもって合格とします
•合格者には「ビジネス法務リーダー®」の称号が与えられます。
<3級公式テキスト(2020年度版)の目次>
1.ビジネス実務法務の法体系
•ビジネスを取り巻くリスクと法律のかかわり
•企業活動の根底にある法理念
•法律の基礎知識
2.企業取引の法務
•契約とは
•契約の成立
•契約成立後の法律関係
•売買以外の契約形態
•ビジネス文書の保存・管理
•契約によらない債権・債務の発生~不法行為等
3.債権の管理と回収
•通常の債権の管理
•取引の決済(手形・小切手等)
•債権の担保
•緊急時の債権の回収
4.企業財産の管理と法律
•企業の財産取得にかかわる法律
•企業財産の管理と法律
•知的財産権
5.企業活動に関する法規制
•取引に関する各種の規制
•ビジネスと犯罪
6.企業と会社のしくみ
•法人と企業
•会社のしくみ
7.企業と従業員の関係
•従業員の雇用と労働関係
•職場内の男女雇用にかかわる問題
•派遣労働における労働形態
8.ビジネスに関連する家族法
•取引と家族関係
•相続
引用元:http://www.kentei.org/houmu/testinfo.html
3級と2級の受験資格はなく、併願での受験も可能です。ただし、1級は2級合格者のみ、受験可能となっています。
司法書士試験や司法試験を目指す人は1級レベルの内容を学習するのは、有益といえるでしょう。法律業務の基礎から学びたい、法律の学習経験のない人は3級から学習して、2級レベルを目標とするとよいでしょう。
ビジネス実務法務検定の法律業務との関連性
ビジネス実務法務検定の法律業務との関連性は以下のようになります。
ビジネス実務法務検定は、”ビジ法と呼ばれています。ビジ法”は、法務部門に限らず営業、販売、総務、人事などあらゆる職種で必要とされる法律知識が習得できます。例えば、営業で取引先との契約書を締結する場面を想像してください。契約内容に不備や不利益がないか発見し、正しい判断ができれば、トラブルを未然に防ぐことができます。身につけた正しい法律知識は、業務上のリスクを回避し、会社へのダメージを未然に防ぐことができます。同時に、自分の身を守ることにもなります。
なお、ビジ法は企業活動の主要分野を多くカバーしているので業種も問いません。
また、ビジ法を習得することは「仕事の質を高める」ということに繋がります。管理職には、部下のリスク管理に効果的です。また、人事異動や、担当業務が変わってもスムーズに新しい仕事を処理する幅広い応用能力が身につけられます。
昨今、企業の不祥事が発生すると刑事責任や損害賠償だけでなく社会から厳しいペナルティーを受けます。例えば、個人情報の漏えいは1人の社員の”うっかり”ミスで会社に大きなダメージを与えます。会社にとって、社員が法律知識を習得していることは絶対条件です。
引用元:http://www.kentei.org/houmu/miryoku.html
法律の知識は、会社の法務部だけに必要なものではありません。営業や総務においても、法律知識は必要不可欠なものです。ビジ法の学習範囲は広く、特徴として、学習内容は全般的に、企業活動との関連性をポイントとしていることが挙げられます。
よって、ビジ法は企業人としての法律に対する意識の引き上げを目指している試験であるといえます。
まとめ
最近、企業の不祥事が頻繁にニュースになっており、企業で働く従業員や役員に対して、高いコンプライアンス意識が求められています。
企業側が自主的に研修を行うのがベストですが、自主的にビジ法を学習することで、コンプライアンス意識は高めることができます。
会社組織に関する会社法、契約や営業活動に関する債権管理、権利関係の中心となる民法、会社と従業員との関係性を成立させる労災など多岐に法律を学習できる資格はビジ法以外にはないといえるでしょう。また、ビジ法は宅建士や司法試験、司法書士、行政書士という上級の法律資格との関連性もあります。
ビジ法を学習して、法律知識を身に着けて、コンプライアンス意識を高めていきましょう。
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