司法書士が企業の法務部に転職するために必要な経験について
公開日:2018/07/16 | 最終更新日:2022/07/20
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近年、企業へ転職を希望する司法書士の方が増加傾向にあります。
転職をする上で必要なことは、今後の司法書士としてのキャリアを考え、どのような業務に就き、何の専門家を目指すかといったことではないでしょうか?また、5年後、10年後にどういった形態(独立なのか、勤務司法書士なのか、共同経営者なのか、パートナーなのかなど)で仕事をしていたいのか、イメージしてみることも大切であると思われます。
企業の法務部への転職
司法書士の有資格者が活躍できるポジションの1つとして企業への就・転職(法務部、総務部といった法律関連業務への就職)が考えられるのですが、一般企業から見て、司法書士資格がどの程度のニーズがあるかという点に関しては正確なデータがないのが実情です。
たとえば企業の法務部門の場合においては、司法書士が一定の法律知識は身につけているとは言え、現実に優先されるのは弁護士資格者や法科大学出身者なのではないでしょうか。また、あまり知られていない事実として、司法書士法上、一般企業に勤めながら司法書士業務を行うことは認められていないことから、企業側としても司法書士を雇うメリットは少ないように思われます。
ただ、自社内に法務部門を置くのは大企業を中心とする一部に限られているのが実情ですが、法令遵守(コンプライアンス)が叫ばれている昨今においては、これから中小企業へと拡大して行くと予想されますので、町の法律家としての司法書士のニーズが高まっていく可能性も充分にあると考えられます。
また、昨今では司法書士が企業法務分野の業務を扱う事も増えつつありますので、司法書士資格というよりは、経験を評価されて企業の法務部等に転職できる可能性も考えられます。
次に、不動産登記のスペシャリストである司法書士を採用したいという、企業、法律事務所のニーズについて、以前までは一定程度あったのですがここ数年は司法書士事務所以外へのキャリア形成が難しくなってきているのです。その理由としては、次のようなことが考えられます。
•リーマンショックの際に、企業、法律事務所共に不動産関連案件が激減したこと
•司法改革によって弁護士が増えたことで、法律関連職種をめぐる就職・転職の競争が激しくなったこと
•競合他社の業績不振や倒産の事情で不動産業界経験者の人材が流動化したこと
わが国においては戦後の高度成長期から90年代前半まで住宅好景気が続きました。しかしながら、かつて160万戸を超えた年間の新設住宅着工件数は、リーマンショック以降100万戸を割り込んだままです。東京オリンピックの開催によって、一部地域では不動産価格の高騰なども騒がれていますが、件数としての伸びはそこまででな無く、一極集中といった所のようです。全国的に見れば、件数がそこまで伸びていない事は不動産登記案件が多くを占める司法書士としてはありがたくない状況です。さらに一時話題になっていた過払い金の問題に関する案件もピークは越えたと見られています。
一方、司法書士の数は2022年4月1日現在で22,907人(日本司法書士会連合会調べ)と、年々増加しており、競争が激しくなりそうな様相となっています。
とは言え、開拓・発展の余地がない訳ではありません。司法書士参入の歴史が浅い「簡易裁判所で訴訟代理業務」や、財産管理を法的に手続きする「成年後見業務」や「信託」、あるいはまた、超高齢化社会を背景とした「相続登記業務」や、コンプライアンスの高まりで中小企業に広がる「企業法務」など、司法書士のフィールドはまだまだ未知数なであると言えます。
それでは、司法書士事務所以外でキャリア形成が見込めないのでしょうか。この疑問に対して考えられることとしては、事務所に勤めながら専門性を高めること、そしてクライアントや他士業への人脈作りを通じて、向こう側から声がかかるような仕掛けを意識的に作るようにすることが重要です。高い専門性と、一緒に仕事をしたいと思われるような魅力を持てるよう、自身を磨いていくことがキャリア形成の一歩かと思われます。そのような視点から見ると、現職の経営者である所長がどのようなやり方をしているのか、リーダー格の先輩はどのようなクライアント対応をしているのか、学ぶべきことは多いのかもしれません
司法書士法との関係上、司法書士として企業で働くためには越えなければないハードルがあります。そのため、弁護士ほど企業で活躍できているとは言い切れない面があるのが現状です。しかしながら、司法書士有資格者(司法書士登録をしていない者)を含めるとさまざまな業種で活躍をしており、とりわけ多いのが不動産会社、金融機関、サービサー(債権回収会社)です。
・不動産会社
不動産登記申請手続きはもちろんのこと、不動産物件や企業間取引を中心とした契約書等のリーガルチェック、各種法務対応、コンプライアンス、顧問弁護士とのやり取りなどを担当します。不動産を取り扱うプロフェッションとしての視点から、リーガルチェックが期待されています。
・金融機関
抵当権・根抵当権などの担保権に関する手続きはもちろんのこと、銀行内外での住宅ローンに関する契約書等のリーガルチェック、ローン事務センターで謄本処理などを担当します。また、物件調査についてで不動産鑑定士との連携をすることもあるようです。
・サービサー(債権回収会社)
競売申し立てに関わる事務、担保権抹消書類の作成、債権譲渡に関わる書類の作成補助、その他アセットマネージャーのアシスタントなどに従事し、幅広い活躍をしております。
ところが現実には、一般企業への転職を目的として司法書士の資格を取る場合、今のところまだその資格が企業全般に広く評価されているとは言えない状況にあります。司法書士資格(知識や業務範囲等)がそこまで認知されていないといった根本的な問題もあるかもしれません。
とは言え企業のコンプライアンス(法令遵守)が重視される昨今においては、司法書士資格取得者は“法的トラブル”をスムーズに相談・解決できる人材として、企業内でも本来高く求められる存在なのです。企業によってはその存在価値が認められ、活躍の場が与えられて昇給・昇格のチャンスを得られる場合もあります。
したがって司法書士のメイン業務である不動産登記経験では一部の業種でしか評価されない現状を踏まえると、司法書士が企業の法務部へ転職して成功していくためには、会社法や商業登記法などの専門知識を活かした業務(会社設立、議事録や契約書などの書類の作成、合併、会社分割、株式交換、事業譲渡などの組織再編等)や裁判業務などの会社法務部門の業務経験を積み、コンプライアンスのセンスを身につけつつ、それらのスキルアップを図っていくことが重要であると言えます。
なお30代後半になってくると、これまでの経験してきた業務の内容を厳しく審査されることから、採用のハードルが高くなり、必然的に転職は難しくなっているという感じでしょうか。
30代ともなるとマネジメントの経験、業務の幅や深さが求められます。また独立が出来る業界ですから、その年齢であると、なぜ独立をしないのか?などの疑問も求人側に出てきますので、司法書士事務所への転職や独立では無く、企業に転職したい理由や企業でどのような活躍が出来るのかを理解してもらう必要があります。
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