SACTサムライマガジン
債務整理司法書士転職

債務整理経験のみの司法書士の転職事情について

2018年10月25日
hasan

公開日:2018/10/25 | 最終更新日:2018/10/25

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1990年代後半から少しずつ増えだした債務整理業務は、2007(平成19)年をピークに減少し、現在はすっかり落ち着きました。
債務整理業務の減少に伴い、債務整理専門の事務所に勤務している司法書士が転職を考え、希望する機会が増えています。

■債務整理専門事務所が現れた背景

債務整理事務所は、債務整理業務のみに特化していて登記業務は殆ど行っていない事務所が大部分です。
債務整理事務所に勤務していると、数年勤めていても登記実務が全く覚えられない、経験ができないのが実情です。
司法書士でありながら、基幹業務である登記の実務経験がない司法書士も少なくありません。

そもそも債務整理を専門にする司法書士事務所が現れたのは、登記業務の減少です。
登記業務以外に見出された活路が債務整理で、債務整理業務の活況に伴い、債務整理業務を専門に扱う司法書士事務所が増えました。

元々登記業務は、古くからやっている老舗の司法書士事務所や大手司法書士事務所の独占状態にあり、よほど不動産業界や金融業界に人脈がなければ、独立した司法書士の新規参入はなかなか厳しいものです。

商業登記は、自分で行う会社が増加したことにより司法書士に依頼する件数は減っています。
役員変更登記も平成18年5月の改正会社法施行により、それまで2年に1回登記が必要だったのが、最長10年に1度で良くなったことも、登記事件が減った原因の一つではあります。

インターネットの普及と充実で相続登記や抵当権抹消は、本人申請で行う人も増えました。
法務局での登記相談も、予約制になるほど盛況なので、本人申請の数は今後も増えていくことが予想されます。

しかし登記件数は減り続けていますが、2013年頃から不動産取引市場は活況で、高値での売買取引や都心部でのタワーマンションの建設、販売も好調です。
登記業務をメインに行っている大手事務所や司法書士法人では、常に求人募集を行っている状況ですので、転職先が全く無いというのではありません。
条件さえ合えば、転職は十分可能な状況と言えるでしょう。

■債務整理専門事務所と登記事務所の違い

債務整理事務所と登記事務所では、待遇に差異があるかは表面ではわかりません。
登記メインの事務所でも、社会保険や賞与や福利厚生も一般企業並みに整えられている事務所はたくさんあります。

債務整理業務と登記業務では、業務内容が全く異なりますので、業務内容に対して給料が少ないと思われることが多いのかもしれません。

■債務整理業務と登記業務の違い

債務整理業務は、債権者との交渉は精神的に厳しいことも多々ありますが、債務者有利の過払い訴訟の判決も出揃っていますので、業務の遂行自体は難しくないといってよいでしょう。
債権の消滅時効の問題がありますが、これも時効中断の措置を取ればよいだけなので、基本的に絶対的な期限が定められていたり、時間が制限されていたりすることはありません。
そもそも債務者代理人就任通知を債権者に送付しても、債権者から全く連絡が無く債務整理業務がなかなか開始しないこともあります。

しかし登記業務は、時間やスケジュールに追われる仕事です。
いつ申請しても構わないという相続登記や抵当権抹消登記、住所変更登記等もありますが、登記を専門にしている大手の事務所や司法書士法人は、不動産売買による所有権移転、金融機関の抵当権設定業務が主な業務です。
不動産売買における所有権移転登記や金融機関の抵当権設定登記は、必ず売買当日、融資実行日当日中に登記申請を行う必要があります。
登記申請先の法務局の開庁時間は、平日の午前8時30分から午後5時15分です。

間に合わないと登記は受け付けてもらえず、損害賠償問題に発展することもあります。
急に売主が来られなくなった、権利証が無い等当日になって様々なトラブルも発生することもあり、迅速に対応することが求められます。
また日中は取引、登記申請と外出して、翌日の登記申請するための書類作成は外出から帰ってきてから始めるという風に、残業が多くなることも珍しくありません。

また登記済証(権利証)、印鑑証明書や実印、本人確認等厳格に対応することが司法書士に求められるので、登記業務の方が債務整理業務に比べて精神的にも肉体的にも負担が大きく、債務整理業務と比べて登記業務の大変さに驚き、負担に対して給与が少ないと感じるのかもしれません。

■司法書士事務所に厚待遇を求める方が間違っている?

そもそも司法書士は現在でこそ法人化が認められ、司法書士法人も増えてきましたが、元々は個人事務所「個人事業主」です。
個人司法書士がそれぞれ集まって『合同事務所』という形態をとっている事務所もあります。
合同事務所は事務所家賃、複合機等の経費は頭割で折半して、後は各々が自由に個人事業主として営業し利益を上げる形態です。

司法書士事務所は、いくら規模が大きくなっても法人化しても会社とは違います。
前述のように、不動産登記業務を多く扱っている事務所は、古くからの老舗事務所が多く、規模は大きくても内部の体質は「個人事務所」で、会社のように管理職がきちんと定められて組織化されているわけでもなく、長く勤めている補助者がそのまま副所長に収まっていたり、所長も個人事業主感覚が抜けていないという事務所もあります。

また、司法書士事務所は、勤務して給与が支払われるビジネスパーソンでいる限りは、いくら司法書士業界内では大手事務所といっても、高給や厚待遇は難しいのが実情です。
勿論給与は低くても福利厚生が充実している事務所や、不動産登記の立会ごとに手数料を支給してくれる事務所もあり、事務所によって様々です。
給与や待遇に対して満足するかどうかは当人次第のところもあります。

事務所に長く勤務して、共同経営者や副所長クラスにまで昇ることを目指せば給与や待遇も上がるかもしれませんが、現在司法書士を取り巻く環境は厳しく、転職に成功しても、いつまで勤務し続けられるかは不透明です。
登記業務の経験を積むためと割り切って、経験を積んだら独立するのも選択肢のひとつです。

■司法書士を取り巻く環境は厳しい

債務整理業務の減少、登記事件の減少と現在でも司法書士を取り巻く現状は厳しいです。
また不動産取引市況は、現在の好況は2020年の東京オリンピックまでで、オリンピック後は、取引数の減少と不動産価格の下落が予想されています。
それに加えて2019年10月に消費税の10%への増税が予定通り行うと発表されたので(2018年10月現在)、これまでの増税のように増税前の駆け込み需要と増税後の反動が起こって、オリンピック前に好況が終わるのではないかという声も上がっています。

登記制度も、AIの進化でいつまで現在の制度が維持されるかわかりません。
数年で大きく変わることは予想しにくいですが、やはりAIによる時代の変化は意識しておくべきでしょう。
大手司法書士事務所でも、現在ほど人員を必要としなくなる時代がくるかもしれません。

また、司法書士は、司法書士業界や士業界隈でしか通用しない資格と言っても過言ではありません。
一般企業の法務部に転職を考えても、弁護士数の増加により企業に就職する弁護士が増えています。
法律業務をオールマイティーに行える弁護士に対して、登記業務が基本で訴訟代理権は訴訟額140万円の制限がある簡裁代理権、という司法書士を雇用するメリットが、企業側にあまりないのが現実です。

転職先に厚待遇を求めるよりも、「組織に所属しなくても何とかやっていける力」を身につけることが司法書士として生き残っていくために必要でしょう。
待遇が良くなくても、経験を積む、人脈を作る等目標をもって割り切って転職先を探すことも大切です。

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