企業内弁護士について
公開日:2017/01/16 | 最終更新日:2020/12/04
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そもそも企業内弁護士とは
企業内弁護士はインハウスロイヤーとも呼ばれます。
司法試験制度が法科大学院の設置、新司法試験の施行のように改変され、合格者が従来の制度から大きく増加したことによって世間に認知されるようになってきた職業です。
簡単に言えば、企業の法務部で、司法試験合格の肩書き、あるいは弁護士資格を有しながら、企業の業務を行う人、ということになります。
弁護士として登録をすると、勤務地の弁護士会に登録する必要があり、毎月、会費が発生します。この点を踏まえて、企業によって待遇は異なりますが、弁護士登録をする企業と市内企業が存在しているようです。
よって、一言に企業内弁護士といっても、弁護士バッジを持っている人とそうでない人が存在することになります(なお、弁護士登録は司法修習後の二回試験を合格していればいつでも任意に抹消・登録をすることができるので、一旦、弁護士登録をしない企業に企業内弁護士として入社したような場合でも、例えば転職を決意して、改めて弁護士としてやっていこうと考えるような場合はちゃんと弁護士としての登録をすることができ、弁護士バッジを手にして仕事をすることができます。)
企業内弁護士の役割
企業内弁護士は基本的には企業の法務部に属します。そこで、日々発生する企業内の法律問題について専門家という立場からアプローチしていくことになるようです。
企業には大手であれば特に、基本的には顧問弁護士が存在します。
それにも関わらず、インハウスロイヤーが必要とされているのは、法務の仕事量が従前より多く、また、企業内での細かな仕事についてまで顧問弁護士を活用すると、当該顧問弁護士の仕事量が増えることになり、クオリティやスピードが落ちる可能性があります。
また、仕事量が増えると、顧問弁護士は当然顧問料の増額を請求してくることになります。
そこで、訴訟案件等は別としても、企業内で解決できるもの、処理できるものについては、企業内で処理してしまおうというのがインハウスロイヤー誕生の経緯なのです。
実際のインハウスロイヤーの業務もこのような経緯を踏まえて、契約書のチェック、顧問弁護士に依頼している案件、特に訴訟案件について、事件関係者へのヒアリング、労務相談、といったことが基本的な業務内容になるようです。
したがって、インハウスロイヤーは、弁護士資格は持っていても、裁判所の法廷に出廷することはあまりないのが実際のようです(企業によっては、国選弁護人については、個人収入として業務にさせてくれるところもあるようです。また、加入している弁護士会に国選弁護の研修義務があるような場合も同様です。)。
このように業務内容は異なりますが、インハウスロイヤーも弁護士として弁護士登録をしている場合、研修や委員会活動を始めとする会務を全うする義務は発生します。研修には新人研修・倫理研修・・・様々なものがあり、委員会活動も月に1度、それ以外に委員会内の部会にも基本的には月に1度参加することになります。こういった活動を弁護士と共にする、というのは通常の社員とは異なるところでしょう。また、企業側もインハウスロイヤーに弁護士登録をさせるのであれば、通常の企業内研修とは別にこういった研修・業務があることを認識しなければなりません(こういった事情から、弁護士登録をしない、という方針の企業も少なくないと聞きます。)。
企業内弁護士のメリット・デメリット
(1)企業内弁護士のメリット
インハウスロイヤーの最大のメリットはあくまでも会社員であり、会社の保護の下にある、ということでしょう。
そもそも通常の弁護士が法律事務所と結ぶ契約と契約そのものの性質が異なります。通常の弁護士は請負契約か業務委託契約であるのに対し、インハウスロイヤーは基本的には雇用契約です。雇用契約である以上、その企業の厚生年金に入ることができます。
また、退職金も発生します。
加えて、残業代も発生します。あくまで業務内容や研修といったところに特殊性があるだけで、基本的には一般の会社員と同じ扱い、ということになります。
弁護士は基本的には個人事業主ですから、退職金、等という概念や残業代という概念は働いていても存在していません。4大法律事務所や外資系法律事務所に勤めているような弁護士だと、クロスボーダー案件を扱う関係上、会議が深夜にスタート、等というときもあります。そのため、これらの法律事務所に勤めている弁護士の多くは、事務所の近くに居を構える必要性に迫られていますが、インハウスロイヤーの場合、そこまでの必要性に迫られる可能性は低いでしょう(住居手当なども場合によっては期待できるかもしれません。)。
(2)企業内弁護士のデメリット
インハウスロイヤーのデメリットとしては、仕事内容、につきるでしょう。基本的には契約書のチェック、それも内容も似たり寄ったりで契約相手が違うような内容のもののチェックの割合が非常に多くなってしまいます。
弁護士であれば、相談案件・交渉案件・訴訟案件とそのステップに応じて色々と行うべきタスクが存在し、それに時間を振り分けながら仕事をこなしていくことになりますが、仕事の色彩、という意味ではやはり単調になりがちです。
また、法廷に立てない、というのもデメリットといえるでしょう。
せっかく司法試験に合格し、弁護士になったにも関わらず、法廷に立たず、ひたすらデスクワーク、場合によっては、訴訟案件のヒアリング、ということに違和感を覚える方も少なくないようです。
転職の際に、その分野専門の法律事務所や企業を狙うのであればそのキャリアはプラスに働きますが、そうでない場合、同期等に経験値で差をつけられてしまっていると感じ、焦ってしまう、という意見もあります。
まとめ
法曹人口の増加に伴って、インハウスロイヤーという新しい弁護士の働き方が誕生しました。
雇用の安定や福利厚生という意味では間違いなく魅力的に映る反面、弁護士としての業務を中々こなせない、というギャップは存在するようです。
メリット・デメリットをしっかりと踏まえた上で、自分の理想に一致する働き方といえるのであれば、法律事務所で勤務する事や独立する以外のインハウスロイヤーという選択肢も十分あり、といえると思います。官公庁で働くこと等も同様にメリットといえるでしょう。
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