司法書士と土地家屋調査士の仕事の違い
公開日:2018/11/09 | 最終更新日:2020/06/16
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司法書士と土地家屋調査士。
どちらも「不動産」「登記」に関連する資格ですので、司法書士資格と土地家屋調査士資格を併せ持つ人も多く、転職の際も有利です。
しかし、「不動産」と「登記」でも、司法書士と土地家屋調査士の仕事の内容や役割は全く違います。
■司法書士の業務は、一般的に次のとおりです。
・登記又は供託に関する手続についての代理
不動産登記の他、会社法人登記も司法書士の業務です。
・裁判所若しくは検察庁に提出する書類の作成、提出代行
・訴訟額が140万円までの簡易裁判所の訴訟業務
上記に加えて、債務整理、民事再生、成年後見、近年は財産管理業務と業務範囲は多岐にわたっています。
■土地家屋調査士の業務は、次のとおりです。
・不動産の「表示」に関する登記について、必要な土地又は家屋に関する調査及び測量をすること
・不動産の表示に関する登記の申請手続きについての代理
・筆界特定手続についての代理
境界は当事者の合意で決まらない場合、登記官が外部の専門家「筆界調査委員」の意見を踏まえて境界を特定する制度で、「筆界調査委員」は土地家屋調査士が務めることが多いです。
■司法書士と土地家屋調査士の登記業務内容
同じ「不動産」「登記」でも、司法書士と土地家屋調査士の業務は全く異なるといってよいでしょう。
登記事項証明書を見ると「表題部」「甲区」「乙区」に分かれているのがわかります。
土地家屋調査士は不動産の「表示」に関する登記で、登記簿の「表題部」を担う資格です。
表題部に関する登記は、不動産の「物理的な状況」を登記簿に反映するための登記で、新築建物の建物表題登記、増築登記、建物を取り壊した際の建物滅失登記、1つの土地を複数に分ける分筆登記、複数の土地を1筆にする合筆登記等です。
また土地の境界確定も土地家屋調査士の重要な業務になります。
司法書士は、登記簿の「所有権」に関する事項が記載される「甲区」と抵当権や賃借権等、「所有権を目的とした権利」について記載される「乙区」の登記、目に見えない「権利」を担当する資格です。
■土地家屋調査士が一人前になるには、実務経験が不可欠
司法書士は、試験の内容が実務に即しているので、受験勉強で培った知識がそのまま実務に役立てられ、未経験でも即戦力に近い業務対応ができるのに対して、土地家屋調査士は、未経験で即戦力になるのは不可能といってもよいでしょう。
理由は、土地家屋調査士の業務は「現場作業」が多いからです。
■土地家屋調査士は「現場主義」
司法書士の仕事が、書類の作成や法務局への登記申請等の業務が大部分で、事務所にいることが殆どなこともよくあるのに対して、土地家屋調査士は測量する土地や建物の現地に赴いての現場作業が主たる業務内容です。
真夏でも真冬でも屋外での作業が中心になりますので、体力的にもハードな仕事です。
勿論、測量結果を元に土地や建物の図面の作成業務や、表題部に関する登記申請を行うための申請書作成業務もあります。
しかし日中は、やはり現場での測量業務がメインで、事務所にいる時間より現場にいる時間の方がずっと長いのです。
土地や建物は、専用の測量機械で測量しますので、機械の操作方法も覚えなくてはなりません。
また土地を測量する際には、ポイントといって「点」を押さえながら測量していくのですが、誤ったポイントを押さえてしまうと、測量結果に大幅な誤差が出て、現況と全く合わないことも出てきます。
また測量だけでなく、境界線に杭を入れる、境界プレートを貼る等の業務もあります。
境界を探すのに、藪の中をかき分けていったり、長靴を履いて側溝に入ったりもします。
境界に杭を入れる作業は、杭がコンクリート製の杭だと、地面に深めに穴を掘り、設置した杭が動かないようにコンクリートを練って流し込んで固める等、土木作業ともいえる内容です。
また境界確定の際には、土地の測量を正確に行うことは当然のこと、境界確定の際土地の所有者同士が現地で立ち会って境界を決める「立ち会い」で、当事者がお互い主張を譲らない場合等、主張をうまく調整して、難しい境界確定をまとめるための「調整役」としてのスキルも必要です。
境界確定は、土地家屋調査士のスキルと経験が最も重要になる業務です。
■土地業務の経験が少ない土地家屋調査士もいる
建物に関する業務は土地に比べると簡単なので、建物測量経験しかない土地家屋調査士もいます。
建物の新築登記は、基本的な測量業務の他は基本的に建築確認書や設計図面のとおりに建っていることを確認するのが主な作業で、後は建築基準法と不動産登記法上の床面積の算入方法の違いに気をつけること位です。
増築や滅失登記の場合は、所有権調査等の調査業務が加わりますが、それでも難しくはありません。
■「ペーパー土地家屋調査士」が多い
前述のように、土地家屋調査士は現場作業と測量技術、経験が必要な業務ですので、司法書士と土地家屋調査士両方の資格を持っていても、土地家屋調査士の業務を実際に行っている人は少なく、全く実務経験がない「ペーパー土地家屋調査士」が意外と多く存在します。
■司法書士と土地家屋調査士の「合同事務所」はメリットが大きい
業務の性質、内容は全く違いますが、不動産登記という同じカテゴリーなので、司法書士と土地家屋調査士が同じ事務所内に所属していると、不動産登記手続がワンストップで行うことができます。
登記のワンストップサービスが提供できるということは、司法書士事務所のみ、土地家屋調査士事務所のみの形態が多い業界の中で、大いにメリットがあり、顧客へのアピールポイントにもなります。
新築一戸建ての現場や新築分譲マンション登記では、土地の購入、分筆、建物新築表題登記から所有権、抵当権の登記まで同じ事務所で完了できますので、効率良く業務が進められます。
また、金融機関のローンの条件で増築登記が必要、土地の分筆登記が必要といった場合でも、同じ事務所なら進捗状況がよくわかりますので、打ち合わせもスムーズに進められて、事務所への信頼感が高まります。
このように司法書士と土地家屋調査士が同じ事務所に所属するのは、メリットが大きいので、司法書士と土地家屋調査士が共同経営する「合同事務所」の形態も多いですが、司法書士事務所が、土地家屋調査士の求人を行っていることもあります。
■司法書士事務所への転職を成功させるためには、
司法書士の転職市場で、土地家屋調査士の資格を最大限有利に生かすためには、
「土地家屋調査士としての実務経験がどれだけあるか」がカギになります。
転職市場で、両方の資格を持っていることは有利です。
しかし司法書士事務所が土地家屋調査士を募集している場合は、土地家屋調査士の業務に精通しているというまではいかなくても、即戦力として活躍できる土地業務と家屋業務の一通り経験がある人材を求めていることが多いのです。
土地家屋調査士は知識も当然大切ながら、司法書士よりも現場での経験や場数をどれだけ踏んでいるかが大切です。
前述のように現場での実地作業がメインの業務で、測量技術や境界確定の立ち会いでのふるまいも、経験を積んで身についていくものです。
土地家屋調査士の資格を転職に活かしたいなら、土地家屋調査士として土地業務と家屋業務両方の業務経験をある程度積んでからの方が、より転職先で重用され、資格が価値あるものになるでしょう。
ただし、両方の資格を持っている場合、司法書士業務だけの経験があれば、司法書士業務に従事してもらいながら土地家屋調査士を覚えてもらうという約束で採用をしている所もあるようです。その場合、司法書士資格と経験の部分での年収評価での入社となり、決して好条件では無いかもしれませんが、司法書士業務の他、土地家屋調査士業務の経験値も評価されるようになれば、飛躍的に年収が上がる可能性もあります。また、両方の資格を保有していても、いずれの経験も未経験の場合には、当初の採用では年収面は決して良いものではないかもしれませんが、同様に両方の経験を評価されるようになれば、年収も必ず上がるでしょう。
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