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中小企業特許

中小企業の特許事情について

2019年6月28日
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特許庁が毎年発行する特許行政年次報告書の2018年版に「中小企業・地域における知的財産活動」という項目があります。その中のデータを見ると、日本の企業数約382万社のうち、中小企業が約381万社と全体の99.7%以上を占め、大企業は0.3%未満に過ぎません。一方、2017年における日本の特許出願件数を見ると、大企業が約84.7%もの割合を占め、中小企業による出願件数の割合は約15.3%であることが示されています。
ただし、中小企業の特許出願件数は、5年前と比べると約20%増加しています。このことから、中小企業の特許事情が変化しつつあることが伺えます。特許庁の施策を含めた最近の中小企業の特許事情を詳しくご紹介します。

1.中小企業の知財戦略の重要性について

(1)国の方針として
これまでは、特許庁も大企業中心の考え方で知財に関する法律や制度を策定してきましたが、特にリーマンショックによって大幅に出願件数が減少したことや、中小企業でもニッチな分野で国内に限らず海外でも事業を展開する事案が増えてきたことから、日本としても、外国との競争に勝ち抜く意味でも、中小企業の知財戦略をサポートする必要性が高まってきました。
大企業については今後もある程度の出願件数が維持されると考えられ、さらに中小企業の特許出願を促すことにより、日本の特許出願件数の増加を図ることができ、結果として、中小企業がスムーズに国内外の事業の拡大を行うことをサポートできます。

(2)国内の事業展開として
中小企業は不安定な企業と思われがちですが、他社と差別化できる強みがあれば、大きく飛躍できるポテンシャルを秘めています。飲食店であれば、味が良ければ繁盛しますが、中小企業も独自の技術があれば、それを武器に製品を売り込むことができます。その大きな助けの一つとなるのが、特許権です。中小企業同士の取引であれば、「特許出願中」の文字だけでも製品の売上に大きな効果を生み出す場合があります。
さらに、最近は、中小企業に関連するM&Aもよく話題になっています。その前提となるのが、知的財産デューデリジェンス(通称、「知財デューデリ」)という知的財産に関する価値評価です。つまり、価値のある特許権を所有していれば、知財デューデリにおいて高い価値評価が得られ、M&Aがスムーズに進んでいきます。中小企業にとって、M&Aの場面でも、特許権は大きな役割を果たせる可能性があります。

(3)海外の事業展開として
海外で事業展開する場合、日本以上に様々な点に注意する必要があります。まず、商標権の冒認出願(盗み取り出願)が多いため、事業を開始する前に商標権を取得しておくことが重要です。中小企業の場合、現地で製品を製造したり輸入してくれる業者を確保してから商標登録出願を考えたりしがちですが、業者や業者経由で情報を入手した第三者によって、先に出願されてしまう事案が後を絶ちません(第三者に出願された場合は、悪意を立証するのはほぼ不可能です)。中国で新元号「令和」が大量に出願されたことからも、いくつかの国では悪意を持った人間が多いことがわかると思います。
その上で、特許についても国内出願を基礎としてその国でも出願しておくべきでしょう。
外国では、日本では大企業としてよく知られていても巨大企業でなければあまり認知されていません。逆に言えば、中小企業であっても、製品が良ければ外国では取引できる可能性が高い、ということです。自動車に代表されるように、「日本製であれば、品質はかなり良いはず」と外国企業には考えられているため、ぜひ外国にも目を向けてみましょう。

2.中小企業をサポートする特許庁や公的機関の施策について

(1)特許庁の制度
特許庁は、2018年3月末まで、所定の要件を満たした個人事業主や小企業に対し、出願審査請求費用や特許料を減免する制度を設けていました。しかしながら、この制度は、資力が乏しいことが条件となっていることから、どちらかと言えば、個人発明家等を救済する制度であり、中小企業の特許出願をサポートする制度ではありませんでした。  
このようなことから、ある程度資力があり、発明を行う体制が整っている中小企業の特許出願を促すため、2019年 4月より、一般的な中小企業の出願審査請求料等を半額にする制度を打ち出しました。出願審査請求料は通常約150,000円以上かかりますので、この印紙料が半額になるのは、大きなメリットです(個人・中小企業の出願審査請求料引き下げに伴い、大企業の出願審査請求料は若干の値上げになっています)。また、所定の要件を満たしていることの証明書の提出も不要になりましたので、中小企業が特許出願する場合の負担が大きく軽減されたと言えます。

さらに、日本特許庁に提出する国際出願(PCT出願)の費用についても、中小企業の場合は、軽減が図られています。上で述べた通り、海外への事業展開も積極的に進めることが重要であるため、この軽減措置は非常に有効です。
また、中小企業の場合、特許法をよく知らないこともあり、出願前に発明品を展示会で発表したり、商談等を行うことにより、特許要件の一つである「新規性」を失ってしまう例が多かったのですが、これを救済する「新規性喪失の例外規定の適用」を受けるための期間が6か月から1年に延長されました(この延長は、外国の制度との調和の面もあります)。
そして、早期審査の申請手続は、中小企業の場合、かなり負担が軽減されています。
特許庁による具体的な中小企業向け支援策をいくつかご紹介しておきます。特許庁は、毎年5月から9月頃にかけて、初心者向けの説明会を各都道府県で開催しています。2019年の説明会については、このサイト(http://www.jiii.or.jp/2019_shoshinsha/)で確認・申込を行うことができます。特許庁の説明会では、最新の知財制度の説明を受けられ、特許庁が作成した正確かつ充実した資料を入手することができます。

また、特許庁は、特許庁職員が全国各地の中小企業に出向いて出張セミナーを行っています(https://www.jpo.go.jp/support/chusho/chitekizaisan/index.html)。これはあまり知られていませんが、特許庁から個別に情報を入手することができる上、今後、出願手続を行う場合においても有効ですので、積極的に利用すべきでしょう。
さらに、面接審査も積極的に行っています。特に、平成29年に大阪に設けられたINPIT-KANSAIでは、定期的に特許庁の審査官による出張面接を受けられます。

(2)その他の公的機関の制度について
最近、中小企業を含めて日本企業が海外で知財に関する出願を行ったり、事業を展開していることを考慮して、費用が非常に高額になる外国出願の出願費用を助成する制度が、各地域の産業振興機構やJETRO(日本貿易振興機構)によって設けられており、例年5月から7月頃に募集が行われています。
また、JETROでは、模倣品対策、係争案件にかかる費用の助成も行っています。JETROにおいてこれらの支援事業に関する問い合わせに対応していますが、手続自体は、弁理士や弁護士等の代理人に手続を依頼することがほとんどですので、弁理士等に相談してもよいでしょう。
また、中小企業の大きな弱点の一つである販路の拡大にも積極的に関わっています。
中小企業の場合、国内は展示会への出展などを通じて販路の拡大を試みることが多いと思いますが、日本の中小企業が発明した技術についても、外国で有用な場合が多いことから、JETROのジェトロ・イノベーション・プログラム(JIP)やINPITの海外知的財産プロデューサーなどの支援制度を設けて、積極的にサポート制度を打ち出しています。

3.まとめ

「日本の企業は、起業から1年以内に30%以上、5年以内80%以上が倒産する」等というネガティブな情報がネット上に氾濫しています。
しかしながら、日本には、非常に魅力ある技術を持つ中小企業が多くあります。そのことに、特許庁や他の公的機関も気づき始め、積極的な支援体制が整っていますし、今後もその方針は変わらないと思います。
実際、知財を利用することによって自社の技術を有効活用し、国内外に事業展開して大きく飛躍している企業も多くあります。
今後は、中小企業も知財に目を向け、ご紹介したサポート制度等を利用しながら、自社の技術を積極的に展開することがカギとなるでしょう。

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