弁護士業務での英語の活かし方
公開日:2016/09/27 | 最終更新日:2016/11/14
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通常、国内の弁護士業務を行う上では、特別な英語の能力が要求されることはありません。
英語を使う業務として想定されるのは英語での契約書のチェックや海外クライアント対応、ということになるでしょう。
中小規模の事務所では、基本的に英語の案件にお目にかかる可能性は低い、といえます(当然、外資系の事務所は除きます)。
つまるところ、事務所単位で英語の能力を求める事務所とそうでない事務所がはっきりと分かれる、ということができます。
大手事務所の場合
西村あさひ・長島大野常松・森濱田・アンダーソン毛利友常といういわゆる4大事務所については、業務で英語を使うことは必須となるようです。
契約書のチェックはもちろん、開始系企業を数多く顧問先に抱える影響で、実際に顧問先の外国人の接待等も行います(4大事務所のすべての事務所が丸の内に移転した理由の一つも東京駅にアクセスがいいことが外国人を事務所に招きやすい、ということのようです)。
これらの事務所は、新卒採用(司法研修合格後の採用)に関しては英語についてはあまり高いハードルを設けていません。実際にTOEIC300点台で採用されている弁護士もいます。
とはいえ、これらの事務所は3~5年契約とされており、契約更新の際に、留学の意思を確認されます(逆に契約更新の際に、留学も出向も話が出ないような場合については、基本的に窓際族においやられる可能性が高いようです。その場合、事務所自体に在籍し続けることは可能ですが、仕事もまわされなくなり(加えて、これらの事務所では、基本的に事件の個人受任は認められていません。そうすると、本当にする仕事がなくなる、という状況に追い込まれるようです)、自然と転職せざるを得ない状況に追い込まれるようです)。
留学する際には基本的に2年の期間が取られており、1年間でロースクール卒業、LLMの取得、その後1年はNY州弁護士として実際に現地の提携している法律事務所に勤務する、ということになるのがパターンの様です。
また、4大事務所ではありませんがTMI法律事務所などは、新入弁護士に対し、一か月程度の語学留学をバリ島でさせる、といったプログラムを準備しています。これにより、平均的に所属弁護士の英語のレベルアップを図るのです。
つまり、これらの事務所は将来的にパートナーとなり得る人材には積極的に留学を経験させるので、入所時にはそこまで高度な英語の能力は求めない、ということになります。
逆に中途採用の場合、これはもちろん年齢との兼ね合いになりますが、英語の能力があることは大きなアドバンテージになります。とはいえ、4大事務所に中途採用されるには例えば、裁判官・検察官としての経験や法律事務所での経験が第一次的には必要です(そもそも転職市場に対してそこまでオープンではありません。もちろん、コネクションがあるような場合については別ですが)。
仮に市場がオープンになっていたとして、英語能力をアピールするには、TOEIC900以上はもちろん、TOEFLの点数も必要です。つまり、「自分には留学はもう必要ありません」というアピールが他の転職者からすれば大きなアドバンテージになります(NY州弁護士の資格があればなお、そのメリットは大きくなるでしょう)。
渉外事務所の場合
渉外事務所の多くは、いくら東京オフィスとはいえ、基本的に外国人弁護士が常駐しています。場合によっては直属の上司が外国人、という場合もあるようです。そうすると、日常会話はもちろん、法的な議論も英語で行う必要があります。
こういった事務所は当然、上記4大事務所のような留学システムを完備していますが、就職・転職の際に英語ができることは当然の条件とされているといえます。
すなわち、法的な英語力、という意味では留学を境に伸ばせばいい、と考えているといえますが、それ以外の例えば日常会話的な部分については、それこそTOEICやTOEFLの点数でかなり上位の成績を取ることが求められます。
受験勉強で英語なんか勉強する暇がなかった!と考える人や、転職に際しても通常業務に追われていて、英会話に通う時間はなかった!といった人はこういった事務所は避けた方が良いでしょう。むしろ、可処分時間を使って英会話を学んでいた人の方が採用されやすい傾向にあるといえます。
その他の場合
上記したように、渉外事務所・4大事務所以外の事務所では、中々英語を扱うことはありません。もちろん、契約書の関係で、秘密保持契約などをチェックすることはあります。もっとも、日本語の契約書と異なり、基本形がある程度固まっているものがほとんどです。
最もメジャーなのは秘密保持契約(NDA)になります。
着目すべきは秘密保持の合意文言、そして管轄と準拠法、ということになり、ある程度の数をチェックすれば、ある程度のチェックポイントが見えてくる、ということになります。そのため、英語に対するアレルギーがなく、例えば大学受験レベルの英語力があれば、ある程度は対応できる、ということになります。
英語ができるに越したことはありませんが、このような事務所については、転職・就職の際に英語能力があれば+αということにはなっても、これが採用において絶対的な成否を分ける、ということにはならないことが多いと言えます。
もちろん、中小規模の事務所でも●●国際法律事務所と名乗っているようなところであれば話は別です。これらの事務所であればひまわり求人やアットリーガルに募集条項を記載する際に、特に経験弁護士に対しては英語のスキルが募集条件に明記されていることになります(採用の際の判断に非常に大きくかかわる、ということになります)。
その際は、自身の英語能力と求められている英語能力がどの程度マッチするのか、あるいはミスマッチなのか、ということをしっかりと判断し、転職の応募をする、しない、という判断をする必要があります。このような規模の事務所では特に留学のシステムが準備されていないところも多くあり、そのような場合に、自身の英語能力を過信したり、面接の際に過大報告してしまうと、実際に就職して仕事をする際に、採用した側にとっても、自身にとっても非常なストレスがかかる結果になることが目に見えています。
まとめ
以上のように、就職・転職に際して英語が占めるウェイトは事務所によって大きく異なります。自分が持っている英語のスキルと事務所が求めているニーズを的確に把握し、就職・転職活動を進めることが重要です。
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